PAGE TOP ▲

経営理念について


企業には,さまざまな経営理念があります。

下に引用している写真は,時代を感じさせますが,パナソニックの理念です。

私も,独立するに当たって,当事務所の理念をどうするか,かなり時間をかけて考えました。松下幸之助の自伝を読んで,その「水道哲学」(水道をひねれば,安価に水が出てくるように,電化製品を社会の隅々にまで行き渡らせる。)には,感動しました。また,ビジネス書のロングセラー「ヴィジョナリーカンパニー」にも,「理念がしっかりしている企業こそが,成長する。」と指摘されています。私は,事業を営むに当たって,理念の確立こそが正に重要だと考えました。

弁護士の使命は,弁護士法によれば「社会正義の実現と人権擁護」とされています。また,個々の法律事務所によっては,「紛争の解決」や,もっと端的に依頼者のために「勝つこと。」「有利な結論を導くこと。」を理念としている場合もあります。

私は,社会正義や人権というのは究極の目標だとは思いますが,抽象的すぎてピンと来ませんし,正義といっても多面的であって,具体的な行動の指針にならないような気がしました。また,目の前の紛争を解決さえすれば,それで本当に足りるのだろうかとも思いました。

考えて見ると,好き好んで弁護士を訪ねて来られる方はほとんどおられません。多くは,トラブルに巻き込まれて,仕方なく,本当はこんなところに来たくないんだけど,やむを得ず来ておられます。そういう意味では,病院によく似ています。

そのようなトラブルに巻き込まれて悩んでいる方が,一番何を望まれているか。

私は,やはり,「安心」して,元の憂いのない生活に戻ることではないかと思います。紛争の解決自体や,面倒なことを弁護士に頼むことは,すべてそのための手段にすぎません。平穏な日常を取り戻して安心できる生活を将来も継続していく,そのためにこそ弁護士は依頼者の力になるべきだと思います。

そこで,私は,当事務所の経営理念は,「依頼者に安心を」以外にはあり得ないと思いました。

また,理念は単なるお題目ではなく,行動の指針となるべきものです。

そこで,私は,事件の方針の決定や具体的な処理に迷ったとき,どうすることが,長期的視野に立って,依頼者の安心につながるのか,ということを軸にして決めるようにしています。

依頼者への説明の仕方や,事務局スタッフの対応など,すべて「依頼者を安心させるためには,こういう話し方にしよう。こういう態度をとるべきだ。」という考えで統一するように努めています。

そして,私の専門の3つ,刑事,行政・税務,反社会的勢力対応に関係する依頼者は,日常生活や企業活動の中でも,最も重大なピンチに立たされており,不安のまっただ中におられます。そういう時にこそ,専門的な知識・経験を駆使して,依頼者に寄り添い,「安心」を与えること,それが,自分が弁護士であることの意味であり,使命だと思っています。

このように自分のスタンスが固まったことで,どんなに忙しくとも,困難な事件があろうとも,あまりストレスを感じずにすむようになりました。また,判断にもブレがなくなったような気がします。pic_01

理念が固まれば,次は戦略です。事務所の経営戦略だけでなく,刑事弁護の戦略ということもずっと考えてきたことですので,続きは,戦略の話をしていきたいと思っています。