最近,バナメイエビを芝エビと偽ったホテル・レストランの事例など,食品偽装の問題が,世間を騒がせています。
食品偽装は,場合によっては犯罪として処罰されかねない重大な問題です。
なお,画像は,今年の夏に,私が旅先でいただいた料理を撮影したものです。大変美味しかったもので,もちろん偽装とは関係ありません。
むしろ食品偽装の問題は,真面目な飲食店,料理人の方こそ,憤っておられるのではないでしょうか。
さて,わかりやすいように,アメリカ合衆国産の米を,新潟産のコシヒカリであると偽って表示した場合を例に挙げて説明ます。
この場合,不正競争防止法や景表法(不当景品類及び不当表示防止法)に違反し,重い犯罪となります。
不正競争防止法では,その21条2項5号で,「商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に関する書類若しくは通信にその商品の原産地,品質,内容,製造方法,用途若しくは数量又はその役務の質,内容,用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者」は、5年以下の懲役,500万円以下の罰金に処すると定めています。
また,法人の場合は,3億円以下の罰金刑とされています(22条1項)。
また,景表法では,原産国に関する不当表示とされた場合は,措置命令(違反行為の差止めなどを命令する)の対象となり,その命令に従わない場合,個人は2年以下の懲役,300万円以下の罰金(15条),法人は3億円以下の罰金となります(18条)。
このような食品偽装は,故意で行ったものでない限りは,犯罪とはなりません。
しかし,実際に故意か過失かはすぐには分かりませんので,捜査機関の捜査の対象となり得ますし,今回の騒動から分かるように,世間から強い非難を浴びます。
こうした事実が発覚したときには,以下のような対応が不可欠です。
刑事事件として立件されるか,あるいは起訴されるかどうかは,行為そのものの悪質性が第一に考慮されますが,その後の対応がきちんとできているかも非常に重要な要素です。
①初期対応
県などの監督官庁に対して,事実の報告や改善措置の説明を速やかに行う必要があります。
また,購入者に対するお詫びや返金,店頭やホームページでの告知,報道機関への発表,新聞広告の掲載などもスピーディに実施します。
②改善措置
外部調査委員会などによる調査,再発防止策の策定と実施,従業員に対する教育措置,内部通報制度の構築,マニュアルの整備などが重要です。
これらの措置については,きちんと文書化・証拠化した上で,監督機関や捜査機関に対して弁護士の意見書とともに提出することになります。実際,このような対応を速やかに行ったことによって,刑事立件を免れたり,不起訴になった事例もあります。
しかしながら,いったん不祥事が発生した場合には,その対応は本当に大変であり,企業にとって多大な損害が生ずる可能性があります。
普段から,コンプライアンスを徹底する姿勢こそが,企業の評判や利益を守るといえるでしょう。