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Archive for 3月, 2019

ペットと法律問題

水曜日, 3月 13th, 2019

 以前からペット・ブームと言われていますが,一般社団法人ペットフード協会の調査によれば,平成29年10月時点で,20代から70代における全国の犬の飼育頭数は約892万頭猫の飼育頭数は約952万6000匹と推計されているそうです。

 私(中村)も以前,犬を飼っていましたが,家族の一員のようであり,大変楽しかった思い出となっています。

 今回は,ペットを巡る法律問題を紹介します(参考文献:渋谷寛・杉村亜紀子「ペットの判例ガイドブック」民事法研究会)。

 

1.ペットの医療過誤

 獣医の医療過誤をめぐっては,以下のような判決があります。

① 糖尿病の犬を入院させながら,獣医師がインスリンを投与せず,  その結果死亡させた場合に,飼い主1人あたり30万円(夫婦で合計60万円)の慰謝料が認められた(東京地裁平成16年5月10日判決)

② 飼い猫の乳房や腹部にしこりを見つけたので,獣医師に受診させたにもかかわらず,その獣医師が生検による組織学的検査を行わなかったため,悪性腫瘍を見落とし,猫を死亡させてしまった場合に,飼い主1人あたり35万円(夫婦で合計70万円)の慰謝料が認められた(宇都宮地裁栃木支部平成22年10月29日判決)。

 飼い主にとってペットは子供同然であり,亡くしたときの悲しみは大きいものですが,,裁判で慰謝料が認められる金額は,それほど大きくはなく,せいぜい数十万円程度にとどまるようです。

 

2.ペットが第三者に危害を加えた場合

 飼い主が自宅の庭で犬を鎖につなごうとしたところ,犬が飼い主の手をかいくぐり外に出てしまい,歩いていた人にかみついて怪我を負わせた場合に,治療費や慰謝料などの損害賠償責任が認められた裁判例があります(名古屋地裁平成18年3月15日判決)。

 また,刑事責任を認めたものとして,自宅を訪れていた客が,犬がいることを知らずに裏庭にいき,そこでつながれていた犬(過去に人にかみついて怪我をさせたことがあった)にかまれて加療約5か月の傷害を負ったという事案で,飼い主に,重過失致傷罪が成立するとされた裁判例もがります(福岡高裁昭和60年2月28日判決)。

 飼い主としては,犬を散歩させたり,リードにつなぐ際には,うっかり犬が人にかみつかないように万全の注意を払うとともに,自宅でも「猛犬注意」などの立て札をするなどしておかないと,法的責任が問われる可能性があります。

 

3.賃貸住宅・分譲マンションとペット禁止の問題

 賃貸住宅の契約や分譲マンションの規約で,ペット飼育が禁止されている場合があります。

 ペット飼育禁止の賃貸住宅を賃借する際に,仲介業者の担当者からペットを飼って良いと言われていた事例について,担当者にはペット飼育を許可する権限がないとして,契約違反による解除を理由とする明渡しが認められた裁判例があります(京都地裁平成13年10月30日判決)。

 また,分譲住宅については,マンションの規約変更により犬猫の飼育が禁止された場合に,新たに犬を飼い始めた飼い主に対して,犬の飼育を禁止する判決が言い渡された裁判例があります(東京地裁平成27年4月9日判決)。

 

4.動物愛護管理法,鳥獣保護管理法

 動物愛護管理法という法律があります。

 この法律では,愛護動物をみだりに殺したり,傷つけた場合には,2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処するとされています。

 愛護動物とは,「牛,馬,豚,めん羊,山羊,犬,猫,いえうさぎ,鶏,いえばと,あひる」,「その他,人が占有している動物でほ乳類,鳥類又はは虫類に属するもの」とされています。たとえば,野良猫であっても,みだりに殺傷することは犯罪になります。

 また,生物の多様性や環境を保護するために,鳥獣保護管理法が定められています。

 野生の鳥獣の捕獲や卵の採取は,特別の許可があるなど例外的な場合を除いて禁止されており,これに違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

 私は,俳句を趣味にしていますが,籠の中のメジロ(メジロは夏の季語)について詠まれた俳句を見ると,ついつい「捕獲の許可はどうなってるんだろう。」と気になってしまいます。

5.まとめ

 犬や猫を飼っている方は大勢おられると思いますが,思わぬところで法的な責任が発生する場合がありますので,注意が必要です。