最近,財務省の事務次官が女性記者に対するセクハラ疑惑で辞職をしたことが大きな話題になっています。
これまで普通だと思って行われていたことが,セクハラ,パワハラとなってしまい,違法性が問題となることが多くあります。
時には,強制わいせつ,暴行,脅迫といった犯罪になりかねない場合もありますが,そのあたりについては,「事例に学ぶ企業と従業員の犯罪 予防・対応チェックポイント」でも紹介されています。
ブログでは,そこまでに至らない場合でも,パワハラ,セクハラとなる場合やその対応について簡単に解説します。
パワハラとは,一般に,職場における地位を利用したいじめ・嫌がらせ行為を指します。
これは,上司から部下へのいじめだけでなく,先輩・後輩間,部下から上司へのいじめも含まれます。
具体的な例としては,
① 暴行・脅迫などの身体的な攻撃,
② 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的攻撃,
③ 仲間はずれや無視など人間関係を分断する行為,
④ 不可能な要求や仕事の妨害(過大要求),
⑤ 過度に程度の低い仕事を命じたり仕事を与えない(過小要求),
⑥ 私的な内容への過度の立入り(個への侵害)
が挙げられます。
また,セクハラとは,一般的には,相手方の意に反する性的な言動と定義され,「対価型」と「環境型」に分類されます。
「対価型」とは,例えば,上司が部下に対してしつこく夕食に誘ったりメールを送ったりして,それを拒否されたことの腹いせに不利益な配置転換をするというような場合を指します。
「環境型」とは,例えば,職場内で部下の体に触ったり,性的な言動を繰り返すことで,従業員の意欲を低下させるような場合を指します。
セクハラ,パワハラは,民事上の不法行為となり得ますので,行為者だけでなく,経営者にも使用者責任としての損害賠償責任が発生します。
ですから,会社の経営者としては,パワハラ,セクハラが発生しないように必要な措置を講じて,職場環境を整える必要があります。
具体的には,
① 組織のトップが,パワハラ,セクハラは職場からなくすべきである ことを明確に示す,
② 就業規則に関係規定を設ける,労使協定を締結する,指針,ガイドラインを作成する,
③ 実態把握のために従業員アンケートを実施する,
④ 相談窓口を設置する,
⑤ 通常研修,再発防止研修を行う
といったことが考えられます。
また,実際にパワハラ,セクハラが発生した場合には,その内容に応じて,行為者に対しては,戒告,減給などの懲戒権の行使も検討されなければならず,悪質な場合には,懲戒解雇の対象ともなります。
行為者としては,パワハラ,セクハラの自覚がなく,単なる教育やコミュニケ-ションだと思っている場合もありますので,適切な経営を行うためには,まずは経営者が正しい知識をもち,その上で,従業員に対して,しっかりとした対策,教育をほどこすべきでしょう。