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固定資産税について課税処分の無効を認めた事例


1 課税処分が税務判例入門無効に!

 固定資産税の課税処分に重大な違法があるとして無効となり,納税者が全面勝訴した事例があります(大阪地裁平成24年2月10日判決・ウエストロージャパン掲載)。

 この事件は筆者(中村)が原告代理人を担当しましたが,行政処分が無効であると認めた裁判例は大変貴重です。

 拙著の「税務判例入門」でも取り上げましたが,このブログでも簡単にご紹介します。

 

2 事案の概要

  不動産業を営むX社が,大阪市内の土地について都市計画法に基づく開発許可を大阪市から受けました。

 その際,大阪市は許可を与える条件として,土地の一部を公園と緑地とし,公園と緑地には住宅を建設することを禁止しました。

 その後,X社は開発行為を行い,101戸の分譲住宅が完成しました。

 X社が所有する公園及び緑地(合計約400平米)について,X社から大阪市に寄付の申出をしましたが,それは拒否されました。

 他方で,大阪市は,総務大臣の定める固定資産税評価基準と,大阪市の定める固定資産評価実施要領に基づいて,この公園と緑地について,雑種地として近隣の宅地と同様の評価(坪単価30万円~40万円程度)をしました。

 その結果,土地の評価額は合計約4800万円もの高額な評価となり,年額約55万円の固定資産税及び都市計画税が課されたものです。

 これに対して,X社は,大阪市を被告として,固定資産税等の租税債務の不存在の確認を求める訴訟を提起しました。

 

3 判決の概要(納税者勝訴)  

 本件各土地には建築物を建築できず,公園及び緑地として利用しなければならない制限が存在する。

 その上,本件各土地を公園及び緑地として維持管理する費用の負担等も考慮すると,近傍の宅地と同等の条件で本件各土地の取引が成立するとは考えられない

 したがって,本件各土地については,取引価格が存在しないか,取引価格を想定するとしても極めて低廉なものにとどまるというべきである。 

 よって,本件各土地の登録価格の決定には重大かつ明白な瑕疵があって無効であるから,同決定に基づいてされた本件各賦課処分も無効である。  

 

4 解説

  固定資産税は,土地や建物といった固定資産の価格に一定の割合で税が課されます。

 そして,この価格とは,「適性な時価」をいいます(地方税法341条5号)。

 この「適正な時価」は,総務大臣が告示した固定資産税評価基準によって,市町村長が決定します(地方税法388条1項,403条1項)。  

 ただし,評価額が実際の土地の時価を上回るときには,固定資産税の価格の決定は違法となるというのが判例です(最高裁平成15年6月26日)。

 本判例で特に注目すべき点は,課税処分の無効を認めたという点です。

 固定資産税については,評価基準だけでなく,各自治体で実施要領等が定められている場合もありますが,本件の公園又は緑地のように必ずしも具体的な評価方法が定められていないこともあります。

 その場合,各自治体は基準がないことを理由に,個別に補正はせずに,現行の基準を無理に当てはめることがあるので,注意が必要です。

 本件については,結局,大阪市は控訴せず,平成24年4月1日に固定資産税の評価方法を改めて,都市計画法の開発行為に伴い設置される公園,緑地については,付近の土地の価額の10分の1に相当する価額とするとして,実施要領を変更しました。

日本版「司法取引」について


企業と従業員の犯罪_書籍カバー1 日本版「司法取引」の導入

 今日6月1日から,司法取引制度が施行されました。

 これは,平成28年度の刑事訴訟法改正で,「証拠収集等 への協力及び訴追に関する合意」という章によって追加されたものです。

 この制度については,「事例に学ぶ企業と従業員の犯罪 予防・対応チェックポイント」でもコラムで解説しましたが,このブログでも簡単に紹介します。

 アメリカ合衆国では「司法取引」の制度が確立されており,広く利用されています。

 日本では,古くは昭和51年に,「ロッキード事件」で,似たようなことがありました。

 これは,田中角栄元総理に対する贈収賄に関連し,その鍵を握るロッキード社のカール・コーチャン副社長の証言について,検事総長が将来にわたり起訴しないことを宣明し,最高裁判所もその宣明を保証する趣旨の宣明を行なったというものです。

 これは司法取引の一種の「刑事免責」に当たります。

 しかし,最高裁判所は,コーチャン副社長の嘱託尋問調書について,我が国の刑事訴訟法は刑事免責の制度を採用していないとして,証拠採用を認めませんでした(最判平成7・2・22)。

 今回の司法取引の制度は,取調べの可視化を拡大する一方で,取調べを通じた供述の確保を図るため,新たに導入されたものです。

2 司法取引の対象

 

  まず,司法取引の対象となる犯罪は,一定の犯罪に限られており,これを「特定犯罪」といいます。具体的には,以下のとおりです。

  ①競売妨害(刑法96条~96条の6)

  ②文書偽造等(刑法155条,155条の例により処断すべき罪,157条,158条,159条~163条の5)

  ③贈収賄(刑法197条から197条の4,198条)

  ④詐欺・恐喝(刑法246条~250条,252条~254条)

  ⑤組織的競売妨害等,組織的詐欺・恐喝(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律〔以下「組織的犯罪処罰法という。」〕3条1項1号~4号,13,14号,4条(3条1項13号及び14号に係る部分に限る)

  ⑥マネーロンダリング(組織的犯罪処罰法10条,11条)

  ⑦財政経済関係犯罪(租税法,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律,金融商品取引法,その他財政経済関係犯罪として政令で定めるもの)

  ⑧薬物・武器関係犯罪(爆発物取締罰則,大麻取締法,覚せい剤取締法,麻薬及び向精神薬取締法,武器等製造法,あへん法,銃砲刀剣類所持等取締法,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律違反)

  ⑨特定犯罪についての証拠隠滅等(刑法103条,104じょう,105条の2,組織的犯罪処罰法7条1項1号空3号に掲げる者に係る同条の罪〔いずれも,前記各号に掲げる罪を本犯の罪とするものに限る〕)

 

3 司法取引の内容

 司法取引をしようとする場合に,「他人の刑事事件」について,以下の行為を被疑者又は被告人の方で行ないます。

  ①検察官,検察事務官又は司法警察職員の取調べに対して真実の供述をすること

 ②証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること

 ③検察官,検察事務官又は司法警察職員による証拠の収集二関し,証拠の提出その他の必要な協力をすること

 これに対して,検察官が行なう行為は,以下のとおりです。

 ①公訴を提起しないこと

 ②公訴を取り消すこと

 ③特定の訴因及び罰条により公訴を提起し,又はこれを維持すること

 ④特定の訴因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しくは罰条への変更を請求すること  

 ⑤刑事訴訟法293条1項の規定による意見の陳述(論告求刑)において,被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること    

 ⑥即決裁判手続の申立てをすること

 ⑦略式命令の請求をすること

 要するに,司法取引の内容は,他人の特定犯罪についての情報を提供する見返りに,自らを不起訴にしてもらったり,刑を軽くしてもらうというものです。

 この司法取引を行なうためには,必ず弁護人の同意が必要です。

 また,検察官と,被疑者又は被告人,弁護人が連署した合意書面を作成する必要があります。

 具体例としては,会社の経理担当者が贈賄に関与している場合に,代表者の関与を積極的に供述する代わりに,自らを不起訴にしてもらうという場合が考えられます。

 

3 日本版司法取引が実務に与える影響

  企業内で不正が発覚した場合,たとえば,公務員に対して贈賄が行なわれたというようなケースが内部調査で発覚したとしましょう。

 その場合,まだ捜査機関がそのことを知らないのであれば,その事実を捜査機関に供述する代わりに,贈賄側の担当者を不起訴,あるいは略式裁判にしてもらうよう検察官に持ちかけることができます。

 ただ,司法取引を持ちかけても,事件の重大性や情状等の事情により,検察官が必ず応じるとは限りません。

 しかし,贈収賄など重大犯罪については,司法取引が成立する可能性は高いでしょう。

 ですから,企業内部で不祥事が発覚した場合には,司法取引の利用の要否を判断する必要があります。

 内部調査を迅速に行なうことの重要性はこれまで以上に高まるといえるでしょう。

横目調査について


 税務判例入門税務調査では,納税者が金融機関に解説している口座の内容を調べることがよく行われます。これを銀行調査とか金融機関調査といいます。

   その中で,実務上,「横目調査」と呼ばれる違法な調査が行われている実態があると指摘されています(大村大次郎「バレると後ろに手が回る脱税のすすめ」彩図社・203頁)。

税務調査が違法と認められた判例については,「プロフェッショナルを目指す人の税務判例入門」でも紹介しましたが,横目調査については詳しく解説できませんでしたので,このブログで紹介します。

 横目調査とは,別件の税務調査に名を借りて,それとは無関係の第三者の口座を調査することです。

 税務調査においては,調査の必要性が認められることが要件とされており(国税通則法74条の2等),必要がないのに,一般的網羅的に銀行口座の内容を覗き見ることは,違法です。

 この点は,最高裁の判例でも明らかにされています(最高裁昭和48年7月10日第三小法廷決定・刑集27巻7号1205頁,志場喜徳郎他編「平成25年改訂国税通則法精解」大蔵財務協会・835頁参照)。

 さらに,銀行調査の場合には,他人名義のものについては原則として調査の対象になり得ず,他人名義であっても本人のものであることが客観的に明らかな場合に調査の対象となし得るという有力な見解もあります(北野弘久「税法学原論・第7版」勁草書房・315頁)。

 そうすると,銀行口座の内容という個人の経済活動や生計に関わる重大な情報について,当該口座について調査の必要性がないのに,必要性があるかのように金融機関を欺き,かつ当該名義人の同意もないまま国家機関が覗き見ることは,個人のプライバシーを大きく侵害するものです(X線検査を違法とした最高裁平成21年9月28日第三小法廷決定・刑集63巻7号868頁,GPS捜査を違法とした最高裁平成29年3月15日大法廷判決・裁判所web参照)。

 国税当局は,仮名預金や借名預金の可能性があるので,対象者の名義以外の口座も調査する必要があると判断しているようです。

 なお,現在の厳格な本人確認の制度の下では仮名預金は困難で,実際には借名預金が問題となります。

 しかし,借名預金の可能性があるから,広くどの口座でも見ることができるというものではありません。

 家族や従業員など借名が疑われる場合にはその氏名を特定して,調査する必要があります。

 私見では,対象者以外の名義の口座に対する調査が例外的に許され,適法と認められるためには,①具体的な事実関係に照らして,当該口座が真実は対象者の口座であり,仮名預金,借名預金であると疑うに足りる客観的な根拠が存在する必要があり,②金融機関に対する照会内容も,その必要性に応じて例えば第三者の名義を特定するなど調査対象を具体的かつ明確に特定したものでなければならないと考えます。

 しかし,実務上は,そのような原則は守られず,銀行口座の内容が調査官によって自由に覗き見られているようです。

 私の担当している裁判でも,横目調査が疑われたことから,調査担当者を証人尋問しましたが,担当者は,なんと守秘義務を理由に証言を拒否しました。

 しかし,そのようなことが許されては,国民の権利侵害を防止することはできません。

 国税当局はベールに包まれた金融機関調査のあり方を透明化し,違法な調査が行われないように徹底し,また,調査手法が疑われた場合には,事後的にであっても国民にきちんとその内容を説明する責任があると考えます。

 

パワハラ,セクハラについて


 企業と従業員の犯罪_書籍カバー最近,財務省の事務次官が女性記者に対するセクハラ疑惑で辞職をしたことが大きな話題になっています。

 これまで普通だと思って行われていたことが,セクハラ,パワハラとなってしまい,違法性が問題となることが多くあります。

    時には,強制わいせつ,暴行,脅迫といった犯罪になりかねない場合もありますが,そのあたりについては,「事例に学ぶ企業と従業員の犯罪 予防・対応チェックポイント」でも紹介されています。

 ブログでは,そこまでに至らない場合でも,パワハラ,セクハラとなる場合やその対応について簡単に解説します。

 パワハラとは,一般に,職場における地位を利用したいじめ・嫌がらせ行為を指します。

 これは,上司から部下へのいじめだけでなく,先輩・後輩間,部下から上司へのいじめも含まれます。

 具体的な例としては,

① 暴行・脅迫などの身体的な攻撃,

② 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的攻撃,

③ 仲間はずれや無視など人間関係を分断する行為,

④ 不可能な要求や仕事の妨害(過大要求),

⑤ 過度に程度の低い仕事を命じたり仕事を与えない(過小要求),

⑥ 私的な内容への過度の立入り(個への侵害)

が挙げられます。

 また,セクハラとは,一般的には,相手方の意に反する性的な言動と定義され,「対価型」と「環境型」に分類されます。

 「対価型」とは,例えば,上司が部下に対してしつこく夕食に誘ったりメールを送ったりして,それを拒否されたことの腹いせに不利益な配置転換をするというような場合を指します。

 「環境型」とは,例えば,職場内で部下の体に触ったり,性的な言動を繰り返すことで,従業員の意欲を低下させるような場合を指します。

 セクハラ,パワハラは,民事上の不法行為となり得ますので,行為者だけでなく,経営者にも使用者責任としての損害賠償責任が発生します。

 ですから,会社の経営者としては,パワハラ,セクハラが発生しないように必要な措置を講じて,職場環境を整える必要があります。

 具体的には,

① 組織のトップが,パワハラ,セクハラは職場からなくすべきである  ことを明確に示す,

② 就業規則に関係規定を設ける,労使協定を締結する,指針,ガイドラインを作成する,

③ 実態把握のために従業員アンケートを実施する,

④ 相談窓口を設置する,

⑤ 通常研修,再発防止研修を行う

 といったことが考えられます。

 また,実際にパワハラ,セクハラが発生した場合には,その内容に応じて,行為者に対しては,戒告,減給などの懲戒権の行使も検討されなければならず,悪質な場合には,懲戒解雇の対象ともなります。

 行為者としては,パワハラ,セクハラの自覚がなく,単なる教育やコミュニケ-ションだと思っている場合もありますので,適切な経営を行うためには,まずは経営者が正しい知識をもち,その上で,従業員に対して,しっかりとした対策,教育をほどこすべきでしょう。

 

カジノ推進法について

2017_0916_31 はじめに

 日本に「カジノ」ができるかもしれない,という話題で賛否両論が持ち上がっています。

 大阪弁護士会でも,「カジノ解禁推進法対策プロジェクトチーム」が立ち上げられ,私(中村)も,委員に就任しています。

 カジノについては,観光の目玉になる,地方の経済発展を促すなどの賛成論もあるものの,他方で,深刻なギャンブル依存症を生み出す,反社会的勢力の参入を防ぐことができず治安の悪化につながるなどの反対論もあります。

 カジノ推進法は,正式名称を「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」といい,別名では,「IR推進法」とも呼ばれます。

 IRとは,統合型リゾート(Integrated Resort)の略称で,例えば,カジノを併設する国際会議場,ホテル,商業施設,レストラン,劇場,映画館,温浴施設などの複合的施設です。

 日本では,まだカジノは合法的なものではありませんが,カジノが観光や地域経済の発展に寄与し財政の改善にも資するとして,政府は積極的に推進する方針を示しています。

 そのような方針に基づいて,平成28年にカジノ推進法が定められたのです

 確かにお小遣いの範囲で健全に遊ぶ分には,カジノで楽しむポーカーやブラックジャックといったゲームは,紳士・淑女のたしなみという面もあると思います。

 現に,競馬はイギリスでは伝統的に上流階級の娯楽として発展してきました。

 しかし,「利用者は楽しいし,施設運営者も儲かるから良い」という単純なものではなく,カジノには深刻な問題もあります。

 

2 カジノを合法的な賭博としてよいか? 

 刑法では賭博が禁止されていますが,その趣旨は,最高裁の判例によれば,健全な経済・勤労生活の堕落を防ぎ,賭博に付随して生じる財産犯などの犯罪の発生を防止するためだといわれています。

 他方で,競馬,競輪,競艇,オートレースといった公営ギャンブルが国(正確には国が出資する特殊法人であるJRA)や地方自治体によって営まれています。

 また,宝くじやTOTOも人気ですし,パチンコは庶民の娯楽の代表格といえるでしょう。

 そのため,賭博が違法だという国民の意識は実はそれほど高いとはいえず,近年でも,有名球団のプロ野球選手が野球賭博に関与していたり,オリンピック出場候補となったバドミントンの選手が違法カジノに出入りしていたことが報道されています。

 ただ,今日本で行われている公営ギャンブルやそれに近い娯楽と,カジノとでは質的な違いがあります。

 パチンコは多くても一日数万円くらいの出費で,一度に何百万円も負けるということはありません。

 また,競馬や競輪は特定の開催日に,限られたレースだけが行われているものであり,着順の予想という面倒な手順を伴うので,実際に賭けるまでにある程度の時間と労力が必要です。

 これに対してカジノでは,例えばルーレットやバカラのように一度に大金(それこそ何億円)のチップを掛けることができ,また,外界と隔絶されて昼も夜もわからないという特殊な環境下で冷静さを失ってしまうおそれがあります。ギャンブル依存症や自己破産の可能性は,今ある公営ギャンブル等に比較して格段に高いものといえ,その対策をどうするのかという深刻な問題があります。

3 反社会的勢力の跳梁

 私の大好きな映画に「ゴッド・ファーザー」がありますが,その映画で,マフィアがラスベガスのカジノを巡って抗争をくり広げるストーリーがありました。

 日本のヤクザも,もともと「博徒」と「テキヤ」から発展してきたものと言われており,賭博と暴力団とは切っても切れない関係です。

 韓国やアメリカにもカジノがありますが,それらの国には犯罪的結社を結成すること自体を犯罪とする,いわゆる「結社罪」が設けられ,組織犯罪には厳しい態度を取っています。

 昨年,私は,韓国の税法学者や税理士と懇談をする機会がありましたが,その際,日本の暴力団について説明を求められ,解説をしました。

 そうすると,暴力団対策法に基づく暴力団の指定について,「政府が正面から犯罪集団を認めているのは,おかしいのではないか」との指摘を受け,非常にとまどってしまいました。

 近年,暴力団は背後に隠れ,いわゆる「経済ヤクザ」として,暴力団フロント企業等を利用して,巧妙に資金を獲得していますので,反社会的勢力のカジノへの関与を防止することは事実上困難です。

 カジノを利用することでの経済発展を検討するのであれば,その前提として,結社罪も視野に入れたより一層の反社会的勢力の駆逐に向けた対策が必要だと考えます。

 

4 まとめ

 以上のような問題があるほか,カジノで得たお金に対する課税をどうするのか(チップを交換したときに所得とするのか,損をどこまで経費とみるのか)といった問題は,一切議論されていません。

 私としては,カジノに力を入れるよりも,寺社仏閣やお城などの観光施設の整備や,能・文楽・歌舞伎などの日本独自の伝統芸能のアピールに力を入れることが,観光の目玉として本筋だと思っています。

 ですから,日本にはカジノはいらない,という意見ですが,皆さんはどうお考えでしょうか。

 

 

プロフェッショナルを目指す人の税務判例入門


税務判例入門今年1月に,経済産業調査会から,「プロフェッショナルを目指す人の税務判例入門」を上梓しました。

税務のプロフェッショナルを目指す人達のために,重要な税務判例を取り上げ,ポイントを解説しました。

若手の公認会計士,税理士,税務を担当する弁護士,企業法務担当者,金融機関関係者にとって役立つ内容になっています。

税法のあらましや判例解説の合間には,「賭博と課税」,「暴力団と課税」,「司法試験と税法」,「国税職員と税法」などの読みやすいコラムも挿入しました。

税に少しでも関心のあるビジネスマンや経営者,大学等で税法を学んでいる学生の方にもおススメですので,書店で見かけられましたら,是非手に取って下さい。

 

 

永田眞三郎先生のこと(追悼)


nagata今年11月10日,関西大学元教授の永田眞三郎先生がご逝去され,本日お別れの会がありました。

永田先生は京都大学大学院卒業後,関西大学で民法の研究・教育に携わられ,2000年から2003年までは学長を務められました。

私は学生時代,永田ゼミに所属していました。

温厚でありながら時に厳しく,学生思いの教育熱心な先生でした。

私は,司法試験の勉強をしていましたが,4回生のとき,そのまま就職せずに受験勉強を続けるべきかどうか,非常に悩んでいました。

私は父親が40歳のときに産まれた子でしたので,当時,既に父親は会社を退職し,収入がありませんでした。

そのため,私が就職もせずに受験勉強を続けることは,家族に大変な迷惑をかけてしまうのではないかと思っていたのです。

ある日,私の両親が永田教授に面談をする機会をいただきました。

そのときに,永田先生から「私はたくさんの学生を見てきているが,中村君はきっと司法試験にパスする。」と言ってくださいました。

それを聞いて私は心から嬉しく,必死で勉強をがんばろうと思いましたし,また,両親も私が就職活動をせずに勉強を続けることを許してくれました。

今でもご恩に感謝しています。

私の父親は旧制中学卒,母親は定時制高校卒でしたので,大学教授のような偉い人に会ったことがなく,大変緊張していたそうです。

しかし,面談から,帰ってくるなり,「大学教授ってどれくらい固くて怖い人かと思ってたけど,すごく紳士で,優しくて話しやすい方で安心した。」と言っていました。

私がその後,検事,弁護士となってからも,永田先生の還暦や古稀のお祝いなどでお会いし,近況を報告していました。

学長をされているときは大変お忙しそうでしたが,数年前には再びゼミ生を教えることになったと言われ,嬉しそうにされている様子から,「先生は,本当に学生が好きなんだな。」と思いました。

大変わかりやすい授業で,書かれた教科書(有斐閣Sシリーズ「民法Ⅲ」,「エッセンシャル民法2,3」など)も読みやすく,かみくだいた内容で非常にありがたかったことを覚えています。

晩年まで病気を抱えつつも常務理事として関西大学の運営に協力されており,無理をされたのではないかなと思います。

享年74歳でした。ご冥福をお祈りいたします。

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刑事訴訟法改正について②


 弁護士の荒木誠です。

 前回に引き続き,改正刑訴法の解説をいたします。

 改正刑訴法においては,「捜査・公判協力型協議・合意制度」(いわゆる司法取引)と「刑事免責制度」が導入されることとなっており,平成30年6月までの施行が予定されています。

(1)捜査・公判協力型協議・合意制度(いわゆる司法取引)

 これは,被疑者・被告人が,検察官との間で,共犯者などの犯罪について協力をする代わりに,自らの処分に関して恩恵を受けることを協議・合意する制度です(350条の2以下)。

 例えば,ある犯罪の補助的な立場の人物が,主犯格の人物の行った犯罪の内容について供述したり,証拠を提供する代わりに,起訴猶予処分を受けるというような場合です。

 ただ,これは,どのような犯罪でも利用できるわけでなく,一定の財政・経済関係犯罪や薬物銃器犯罪などに対象犯罪が限定されています

 例えば,贈収賄,詐欺,恐喝,横領,租税に関する法律違反,覚せい剤取締法違反などの犯罪です。

 他方,生命・身体に対する犯罪や性犯罪などについては,刑の減免を認めるのは正義に反するので,対象犯罪から除外されました。

 協議を行う際には,弁護人が関与することが必須とされており,最終的に合意をする場面でも弁護人の同意が必要されています。

 

2)刑事免責制度

 証人には自己の刑事責任につながる事項については証言拒絶権があります。

 刑事免責制度は,証言を証人への不利益な証拠として使わない代わりに,上記の証言拒絶権を失わせて,証言を強制させるという制度です(157条の2以下)。

 協議・合意制度との違いは,対象犯罪の限定がなく,合意が必要でないなどの点です。

 手続としては,検察官が,得ようとする証言の重要性,関係する犯罪の軽重などを考慮した上で,刑事免責による証人尋問を請求します。

 裁判所は,原則としてこの請求を認めなければなりません。

 仮に,刑事免責が決定されたにもかかわらず,供述を拒否した場合には,証言拒絶罪として,1年以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

 

(3)まとめ

 これらの制度については,他方で,この制度は,自らが有利な処分を受けようとして,虚偽供述を誘発するという危険性があると指摘されています。

 そのため,えん罪の温床となることのないよう適正な運用が求められるところで,我々弁護士も十分注意する必要があると考えています。

 

刑事訴訟法改正について①


写真(弁護士荒木) 弁護士の荒木誠です。

 昨年刑事訴訟法の一部が改正されましたので,本ブログにて,その解説をします。

  1 はじめに

えん罪」―近年,この言葉をテレビや新聞などで耳にする機会も多いのではないでしょうか。

 刑事手続における鉄則として,「10人の真犯人を逃すとも,1人の無辜を罰するなかれ」というものがあります。

 これは,たとえ10人の真犯人を逃したとしても,1人も無実の罪で罰せられること(えん罪)があってはならないという意味です。

 えん罪被害を防ぐためには,広く取調べを可視化し,手続の適正化を図ることが強く要望されるに至っています。

 

2 改正刑事訴訟法の成立

 平成28年5月24日,時代に即した新たな刑事司法制度の構築をするため,「刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立し,同年6月3日に公布されました。

 本改正の主要な内容としては,

 ① 取調べの全過程における録音・録画制度の導入

 ② 証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度(いわ ゆる「司法取引制度」)等の導入

 ③ 通信傍受の合理化・効率化

 ④ 裁量保釈の判断に当たっての考慮事由の明確化

などがあげられます。

なお,これらの改正は,現時点で既に施行されているものもありますが(④など),まだ施行されていないものもあります。

 例えば,①取調べの全過程における録音・録画制度の導入は,公布日から3年以内,②司法取引の導入については,公布日から2年以内の施行が予定されています。

 ここでは,上記改正点のうち,①取調べの全過程における録音・録画制度の導入について解説をします。

 

3 取調べにおける問題点

 取調べの目的は,被疑者から事件に関する事情を聞き取りなどし,起訴・不起訴を判断することにあります。

 自白は,事件の全体像を把握し,動機等の主観面を立証するために重要な証拠であるため,取調べで自白を獲得することが重視されてきました。

 他方で,取調べ室が密室であり,その中で取調官と長時間を過ごすなどの性質があるため,自白の強要がなされたり,被疑者が取調官に迎合するなど虚偽自白が生じやすい状況があります。

 そこで,今回の刑訴法改正では,取調べへの過度の依存からの脱却が目的とされ,取調べの録音・録画制度が導入されることになりました。

 

4 取調べの全過程における録音・録画制度の導入

(1)制度の概要

 捜査機関は,逮捕・勾留中の被疑者に対しての「対象事件」について,取調べをするときには,原則,取調べの全過程の録音・録画が義務付けられることになりました(刑訴法301条の2第4項)。

(2)制度の対象者及び対象事件

 しかし,本改正では,全ての事件について,録音・録画が義務付けられたわけではありません。

 まず,逮捕・勾留中の被疑者に限定されており,在宅の被疑者については義務がありません。

 そして,対象事件は,いわゆる「裁判員裁判対象事件」と「検察独自捜査事件」の2類型に限定されています。

 ここでいう「裁判員裁判対象事件」とは,死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件などの裁判員裁判の対象となる重大事件をいいます。

 「検察独自捜査事件」とは,いわゆる特捜部が単独で捜査を行う事件などをいいます。

(3)例外事由

  録音・録画義務が免除される例外事由も規定されています。

 例えば,

 ① 機器の故障などで記録ができないとき

 ② 被疑者が記録を拒んだことなどにより,被疑者が十分な供述をすることができない場合

 ③ 暴力団構成員による犯罪である場合

などです。

(4)まとめ

  取調べの録音・録画制度が導入されることになったものの,全ての事件に適用があるわけではない点には留意が必要です。

 また,実際の運用については,現時点では不透明な部分も多いため,動向を注視していく必要があるといえます。

 

 

5周年記念講演会&懇親会


IMG_02919月8日(金)に,ホテル阪急インターナショナルで,顧問先企業の方々をお招きして,講演会を開催いたしました。

約30名の方にお集まりいただき,コンプライアンス契約書作成の注意点等の講演を行いました。

また,その後の懇親会では,顧問先企業相互の貴重な交流の機会となり,喜んでいただくことができました。

山あり谷あり,日々勉強を続けている中での,あっという間の5年間でしたが,これからも精進し続けます。

今後とも,よろしくお願いいたします。