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薬物依存症について

drug_yakubutsu_mayaku_ranyou弁護士の髙田です。

今回は,薬物依存症についてお話します。

私は,プロボノ活動の一環として,毎年,数件の国選弁護事件を担当してきました。

国選弁護人として選任される事件は原則として,弁護士が内容をみてから選べるものではないので,必然的にさまざまな種類の事件を扱うことになります。

大阪で国選弁護を担当しているとどうしても再犯率の高い薬物事件を割り当てられる機会が多くなってしまいます(令和2年版警察白書によると,令和元年中に薬物事犯で1万3364人が検挙されています)。

 ここで改めて説明するまでもなく,覚醒剤などの違法薬物は仕事や身近な人の信頼など,有形・無形を問わず多くのものを失います。

薬物事犯で逮捕された人に警察署で接見すると,「前に捕まった後,もうやめようと思っていた」,「やめられたと思っていたのに,生活がうまくいかなくなって,つい手を出してしまった」などと後悔の気もちを伝えられる一方で,半ば諦めの言葉を口にする人も少なくありません。

「なんとか違法薬物から脱却して,今度こそは安定した生活を送ってもらいたい」と願っている弁護士としては,なんとも忸怩たる思いがする瞬間です。

そうした中で,「今度こそ薬をやめたいので,社会復帰した後には支援団体のお世話になりたい」という前向きな希望を伝えてくる人もいます。

もちろん,裁判で有利にみられたい,という動機による場合もありますが,本人がそうした希望をもっているのであればその気持ちに賭けてみたい,とも思うのです。

そうした場合,本人の話をよく聞いて特に意思が固そうであれば,弁護人として薬物依存症脱却支援団体に相談をお願いすることがあります。

 先日も大阪で活動されている支援団体を訪問して,相談に応じていただきました。

そちらではまず,「薬物依存症が病気であり,もはや自分自身の努力だけでは脱却することができない」ということを十分に理解させてから,薬物依存からの脱却を願う同じ境遇の仲間とともにグループカウンセリングなどのプログラムを地道に続けてもらっている,のだそうです。

社会復帰した後に,自ら,自由が制限される環境に飛び込むのですから,プログラムを継続することは利用者にとってとても厳しいものでしょう。

それでも真面目にプログラムを続けた人に関しては再犯率がとても低いとのことでしたので,私としても希望を抱くことができました。

 逮捕・勾留から裁判までの短い弁護活動の中で国選弁護人としてできることは限られます。

そうした中で本人に依存症脱却の決意をさせるためにも,できるだけ身内の方と連絡をとり,法廷で情状証人として語りかけてもらうようにしています。

「今度こそは立ち直ってもらいたい」と強く願っている人のためにも,薬物依存症の方には二度と同じ過ちをしないという決意を大切にして努力を続けてほしいものです。

フリー素材と利用規約


saiban_small_no_gavel弁護士の荒木誠 です。

最近,当ブログでもイラストを使用しようと考え,色々なフリー素材を探していたところ,やはり「いらすとや」のフリー素材は種類も多く,見た目的にも使いやすいかなと思っています。

法律関係では,裁判のイラスト(冒頭のイラスト)や弁護士のイラストなどは,色々な場面で使えそうです。

ところで,素材を使用するに当たって,サイトの利用規約を確認したのですが,利用者としては,いくつか注意すべき点があるなと感じました。

そこで,今回は,その利用規約も確認しながら,フリー素材の利用規約について考えてみます。

 

1 フリー素材と著作権との関係

一口にフリー素材といっても,単に無料で使える(ロイヤリティフリー)という意味で言っている場合もあれば,著作権フリーという意味で言っている場合もあるかと思います。

 つまり,フリー素材だったとしても,必ずしも著作者が著作権を放棄しているとは限りません。そのため,著作権が認められる素材については,利用方法によっては,著作権法違反となる可能性があります。

 「いらすとや」においても,素材は無料で利用できるものの,著作権は放棄していない旨記載されています。

 

2 利用規約とは

 フリー素材の作成者としては,多くの方に利用してもらいたいと考えるはずですが,想定外の使われ方をされては困るので,予め利用規約を定めて,利用方法を限定した上で利用を認めることが一般的かと思います。

 この点については,著作権法63条において,著作権者は,他人に対し,その著作物の利用を許諾することができるとし,許諾を得た者は,その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内に於いて著作物を利用できる,と規定されています。

 ここで規定されているように,あくまでも,許諾された方法や条件の範囲内においてのみ利用が許されているに過ぎませんので,その範囲を超えた利用については,著作権法違反となる可能性がありますから,注意が必要です。

 

余談ですが,利用者に利用規約を確認させる方法としては,いろいろなパターンが考えられます。

例えば,①サイトのフッターに利用規約へのリンクを設置するパターン,②サービス利用の申込画面に利用規約を表示し,同意のボタンをクリックさせるパターンなど様々です。

サイトの運営側としては,きちんと利用規約を確認して利用してほしいと考えるのが通常かと思いますが,あまり手間が増えると利用者にとっては不便になりうるので,そのバランスが難しいところかと思います。

 

3 利用方法について

 利用方法としては,大きく分けて,個人が私的に利用する場合,商用利用をする場合が考えられます。

 どのような場合が商用利用に当たるかについては,サイトごとに考え方は様々あるようですが,大まかにいうと,利益を得る目的で使用される場合が想定されていると思われます。

 そして,商用利用については,サイトによっては別途費用がかかる場合もありますので,事前に利用規約を確認することが重要です。

 

例えば,「いやすとや」では,商用利用に関しては,無償で利用できる点数に制限を設けており,「書籍・チラシ・パンフレット・ウェブ・テレビ・パッケージ・電子書籍・動画・ソフトウェア・パワーポイントでのプレゼン・卒業アルバム・名刺など、媒体を問わず1つの制作物につき20点(重複はまとめて1点)まで商用利用をすることができます。」(よくあるご質問)と記載されています。

また,ここでいう制作物の個数をどう考えるかという点については,「一般的な企業のホームページや情報をまとめたサイトのように制作後に大きな変化のないサイトについては1サイトにつき20点までとなっております。商用のサイトであっても、宣伝以外のユーザーにとって有益なオリジナルのコンテンツが追加され続けるサイトの場合は、1記事ごとに20点までご利用いただけます。ただし無料で閲覧できるオープンなサイトに限ります。」(よくあるご質問)と記載されています。

そうすると,当ブログの記事のようなコンテンツについては,1記事が1つの制作物であると考えて,その1記事ごとに20点まで利用できると考えてよさそうです。

 

そのほか,リンクやクレジット表記の要否,加工の可否といった利用方法についても,サイトごとに異なりますので,事前に利用規約を確認する必要があります。

 

4 まとめ

 ネット上のフリー素材を利用するときも,事前に利用規約をきちんと確認して,正しく利用するように注意してください。

 なお,ネット上でフリー素材だとして表示されているものであっても,実際にはフリー素材ではない可能性もありますので,ちゃんと素材を提供する元のサイトを確認してから利用するようにしましょう。

 

 

 [l1]冒頭のイラストデータ

https://www.irasutoya.com/2013/07/blog-post_1377.html

LGBTの法律問題


lgbt_rainbow_flag近年,LGBTなどのセクシャル・マイノリティについて報道されることが多くなり,皆さんも目にしたことがあると思います。

数年前に,著名なお笑いタレントが,30年以上前に人気のあった,男性同性愛者を揶揄したようなキャラクターをテレビの企画で演じ,大きな批判を浴びたということがありました。

このようにLGBTに対する社会の意識は大きく変化しつつありますが,差別がなくなったわけではありません。

また,現代社会では,企業としても十分な配慮が必要です。 

なお,画像のイラストは,レインボーフラッグといって,LGBTの社会運動を象徴する旗です。

1 LGBTとは

LGBTとは,セクシュアル・マイノリティを表す言葉で,レズビアン(女性同性愛者),ゲイ(男性同性愛者),バイセクシュアル(女性も男性も性的対象となる人),トランスジェンダー(性的越境者)の頭文字をとったものです。

また,これら以外にも,性のあり方は多種多様です。

インターセックス・性分化疾患(産まれたときに身体的特徴だけでは男女判別ができない人たち),クエスチョニング(性自認や性的嗜好を確定しない,あるいはできない人たち),アセクシュアル(性的欲求のない人たち),Xジェンダー(性自認が男女二分になじまない人たち)などがあります。

「異性同士が好きになるのが正しい性のあり方である」という考え方は,現代の社会では一方的な見方にすぎません。

人間には,多種多様な性のあり方が存在しており,そこには善も悪も,本来的なものも非本来的なものもないのです。

2.企業に求められる配慮 ~ セクハラについて

ただ,セクシャルマイノリティである場合,世間一般から偏見の目で見られることをおそれ,自らのことを公にする(カミングアウト)ことを避けていることが多くあります。

そのため,例えば,職場で冗談めかして,「どうして結婚しないの。」,「ひょっとしてレズ?」などと発言することがあると,それはLGBTに対するセクシュアル・ハラスメントに当たります。

場合によっては企業に損害賠償義務が生じるのです。

諸説ありますが,日本では13人に1人がLGBTであるとの報告があります。

ですから,社内には,LGBTの人がいるかもしれないことを常に考えて,言動に気を付ける必要があります。

3.企業に求められる配慮 ~ セクハラ以外

日本では,同性間の結婚がまだ認められていません。

ですから,LGBTの人たちにパートナーがいる場合でも,法律上の配偶者にはなっていません

しかしながら,法律上の結婚をしていないとしてもパートナーとの共同生活は,その人にとってかけがいのないもので,男女間の結婚と何ら変わるものではありません。

したがって,配置転換を決める際にも,同性パートナーの存在を配偶者と同等に考慮する必要があります。

ですから,たとえば同性パートナーが病気で看護をする必要があるとの申出があるにもかかわらず,そのことを一切考慮に入れずに遠方への転勤を命じる配置転換命令をした場合には,それが裁量を逸脱した違法なものとなるおそれがあります

また,採用した男性従業員から,性同一性障害の診断書が提出され,「自分は女性なので,名前,制服,トイレ・更衣室の使用など,すべて女性として取り扱って欲しい。」と言われることも考えられます。

企業としては,他の従業員の抵抗があるのではないかと考えて,このような申出には困惑するかもしれません。

しかし,職場の実情に応じて可能な範囲で,従業員の性自認に配慮した職場環境や労働条件を整えることが必要です。

たとえば,名前や制服などは本人の性自認に直接かかわるものであり,企業に不利益を生ずるものとはいえません。

ですから,原則として本人の希望に従った対応が必要でしょう。

トイレや更衣室のように他の従業員と調整が必要な事項については,どうでしょうか。

すぐには実現できないとしても,職場全体の環境改善の問題として,本人の話もよく聞きながら,周囲の理解を得るよう努め,時間をかけてでも対応をしていく必要があります。

この点,性同一性障害の男性労働者に対して,本人の希望する女性の容姿,名前での就労を禁止した上で,それに逆らった当該労働者を懲戒解雇した事例について,懲戒解雇が無効と判断された裁判例があります(東京地方裁判所平成14年6月20日決定)。

4.同性パートナー間の法律問題

同姓パートナーと生活している人が,老後の問題を心配したり,相手に財産を遺したいというような場合があります。

法律上の結婚ができないため,養子縁組をしているケースがありますが,実はそれにはリスクがあります。

養子縁組は,「親子関係」を築くための制度ですので,同性カップルの場合には,果たして法律上の養子縁組の意思があるといっていいのか,問題となる可能性があるからです。

しかも,養子の場合は相続権が100%となりますので,実際に相続が発生した場合に,兄弟や親など他の相続人となり得る人から,養子縁組の無効が主張されて,争いになるリスクがあるのです。

そこで,公正証書遺言や,任意後見契約を活用して,トラブルを未然に防ぐことが大切ですが,現行法上では限界もあります。

例えば,アメリカ合衆国や,イギリス,ドイツ,オランダなど欧州諸国,またアジアでも台湾で,同性婚が認められています。

日本でも,東京都渋谷区を始めとして,大阪市でも同性パートナーを公的に証明する制度が採用されています。

私見としては,同性間であっても結婚を認めるべきだと考えていますので,日本でも制度の改正が望まれるところです

文責:弁護士中村和洋

法律の中の幽霊


お化け弁護士の渡邉春菜です。

8月が過ぎ去り,9月が到来しました。

体温より高い外気温にとろけそうな日々もようやく終盤。

とはいえ,週間予報を眺めれば,予想最高気温は35度前後にべったり張り付き,秋の姿は未だ見えず。

せめてウェブ空間の中だけでもひんやりとした涼を演出すべく,本日は「幽霊」のお話です。

 

なお,当業界(法曹界),実にさまざまな紛争を扱いますため,「幽霊よりも人間の方が怖い」というご発言をされる方が大変多いのですが,幽霊よりも恐ろしい人間のお話は,涼しさを通り越して凍り付きそうになりますので,本ブログでは省略させていただきます。

 古今東西,幽霊の存在は,多くの人により信じられ,語られ,研究されてきました。しかし,現在においてもその存在は証明されていません。

現代の日本の法律でも,幽霊なるものは存在しないことになっています。

「幽霊」という文言が載っている法律は,寡聞にして存じません。

はりめぐらされた法の網も,幽霊には及んでいません。

民法には3条1項に「私権の享有は出生に始まる」という大変格調の高い条文があります。

これは要するに「人は生まれながらにして,私法(民法等)で認められた諸権利(人格権・財産権等)を有しうる」という意味なのですが,同時に「人は亡くなったらこれらの諸権利を有する資格を失う」ということを意味します。

つまり,幽霊に「権利」はありません

刑法では,主に「者」(≓人)に対する処罰を定めていますが,亡くなった方はこれに含まれません。つまり,幽霊は処罰されません。

 

現在の法律は基本的に「幽霊は存在しない」という前提で作られ,運用されています。しかし,法律の話をしている際に「幽霊」が一切登場しないかというと,実は登場シーンがないではないのです。

いわゆる「事故物件」,例えば,居住用マンションの一室で居住者が亡くなり,その後その部屋には「幽霊が出る」という噂が絶えず次々に入居者が変わっていたものの,そうとは知らずにこれを購入してしまった方がいるとします。後からこの事実を知った購入者は,(一定の条件を満たせば)民法に基づき,売買契約を解除したり売主に損害賠償請求等をすることが出来ます。 

 

今年4月に改正される前の民法(改正前民法)では,「売り物に『瑕疵』(読み方:かし,意味:キズ)があった場合,一定の条件を満たせば,購入者は売主に対して売買契約の解除や損害賠償請求ができる」となっていました(改正前民法570条)。

売り物にキズ(瑕疵)がある」とは,「この手の売り物には一般的に×××という品質や性能があるけれども,この売り物にはそのような品質や性能がない」という状態です。

例えば,白雪姫がリンゴ売りから買ったリンゴが毒入りの場合,このリンゴには「キズ(瑕疵)」があります。

通常売られているリンゴは食べることができますが,白雪姫が買ったリンゴは毒が入っていて食べることが出来ないものだったからです。

この「キズ(瑕疵)」は,「買ったリンゴに毒が入っている」とか,「買ったマンションが雨漏りする」等の物理的なものに限られません。

心理的瑕疵」,つまり,「売り物の物理的な性能等に問題があるわけではないけれども,購入を考えている人が『そんな事情があるなら買いたくない!』と強い心理的抵抗を感じやすい事情」も含まれます。

以前の居住者がこの部屋で亡くなっていて,以後幽霊が出るという噂が絶えない」というのも,この事情の一つにあたり得ます。 

したがって,このような部屋を買ってしまった場合,(一定の条件を満たせば)契約の解除や損害賠償請求が出来ることになるのです。

 

なお,この4月に改正された民法では,瑕疵に関する売主の責任が定められた旧民法570条(瑕疵担保責任の定め)が削除されました。

しかし,代わりに「契約不適合責任」という条文(改正後民法565条)が新たに出来ました。

そのため,上記のような心理的瑕疵に関する考え方は,基本的に変わらないと思われます。 

ただ,変更点が一つあります。 

第一に,説明の仕方。「この手の売り物は一般的に×××という品質や性能を持っているけれども,この売り物にはそのような品質や性能がないから,この売り物にはキズ(瑕疵)がある」という説明の仕方が,「この手の売り物は一般的に×××という品質や性能を持っているけれども,この売り物にはそのような品質や性能がないから,この売り物は契約不適合(=売買契約に適合した売り物ではない)」という説明に変わります。

第二に,購入者が売主に何を請求できるかです

改正前は①契約解除②損害賠償請求が出来るとなっていましたが,改正後は,これらに加えて,③売買代金減額請求が可能になります。(ごく例外的なケースになるとは思いますが,場合によっては)④代替物の引渡請求(=同じような部屋を引き渡せとの請求)も可能かもしれません。

 

以上,本日は,法律の世界に出てくる幽霊のお話でした。

怪談的ひんやり感を楽しんでくださった方,サムさを感じられた方,いずれも,まだまだ続きそうな暑さに負けないようご自愛ください。

イラスト作画:中村和洋

 

個人情報保護について


 みなさんは官報をご覧になったことはありますか。

 官報では,法令の公布が行われるほか,閣議決定事項や叙勲・褒章に関する事項といった国の広報,地方公共団体や裁判所の公告事項などが広く掲載されます。

 実は,行政機関の休日を除いて毎日発行されており,紙媒体のほかにインターネットでも過去30日間分を無料で閲覧することができます。

 司法試験合格者の氏名が掲載された官報などで購入希望者が殺到することもありますが(私も1部入手しました),大半は官公庁や図書館などで定期購読されているだけですから,実際に目にされる機会は多くないかもしれません。

 そんな官報には,破産手続開始決定の公告として,破産者等の個人情報が掲載されます(破産法32条)。

 破産手続は,債権者に多大な負担をかけて債務者の財産関係を清算するものですから,個人情報の公告自体はやむを得ないところですが,当然,その個人情報は本人にとっていつまでも自由に知られてよいという情報ではありません。

 7月29日,国の個人情報保護委員会は,官報から収集された多数の破産者等の個人情報をウェブサイトに掲載している2事業者に対し,個人情報保護法に基づき,当該ウェブサイトを直ちに停止するように命じました

 個人情報保護法は,個人情報の収集に際して本人に対する利用目的の通知・公表を義務づけていて(個人情報保護法18条),個人情報を第三者に提供するには,原則として本人の同意を得なければならないと定めています(同法23条1項)。

 今回,停止を命じられたウェブサイトは,これらに違反しているとして是正勧告を経て停止命令に至りました。

 たしかに,破産者の情報を知りたいという需要が存在することは理解しますが,破産者の個人情報が蔑ろにされてよいということにはなりません。

 (私にはおよそ信じられないのですが,)アイドルやプロ野球選手などの自宅住所が雑誌に公開されていた時代とは異なり,現在は,卒業アルバムですら住所の記載がされなくなるほど個人情報の重要性が浸透しています。

 そうすると,一度は官報に掲載された情報であるといえども,破産者の個人情報も保護されるべきといえます。

 ところで,今回ウェブサイトの停止が命じられた2事業者については,所在不明となっているようです(そのため,公示送達の方法により命令の効力が生じています)。

 インターネット上で個人情報が公開された場合の被害回復の難しさを感じさせられるニュースとなりました。

(文責:弁護士 髙田脩平)

勾留理由開示について


弁護士の荒木誠です。

最近,京都の放火殺人事件の関係で話題になりましたが,今回は,勾留理由開示に関する手続について解説します。

 

1.勾留とその要件

まず,勾留とは,被疑者や被告人の身柄を拘束する処分のことをいいます。

 

これは,裁判になる前の捜査段階における「被疑者勾留」,起訴された後になされる「被告人勾留」に分類できます(以下,簡略化のため区別なく論じます)。

 

どのような場合に勾留が認められるかという要件については,刑事訴訟法(以下「法」といいます。)60条1項に規定があります。

 

これによると,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で,次の①から③の各号いずれか一つに当たるときは勾留ができる,とされています。

 

①定まった住居を有しないとき

②罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき

③逃亡し,逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき

 

②の罪証隠滅や③の逃亡については,判例上,単なる抽象的なおそれではなく,現実的な可能性を検討することが要求されているのがポイントです。

 

また,そのほか,「勾留の必要性」も要件になると考えられています。

 

実際の勾留状には,例えば,暴行罪であれば「被疑者(被告人)は,●年●月●日ころ,××において,被害者に対し,▲▲などの暴行を加えたものである。」などといった嫌疑内容のほか,法60条1項何号の事由に当たるという結論しか書いてありませんので,具体的な理由の中身までは分かりません。

 

しかも,捜査段階では,弁護側は,捜査側が持っている証拠を見る手段がありませんので,どの証拠をどのように隠滅することが想定されているのか,正確に把握することは困難です。

 

弁護人が勾留の効力を争う場合には,勾留の理由が認められないことなどを主張するのですが,勾留の理由自体明らかではないため,依頼者の話を参考に,経験に照らして収集されている証拠内容を予想しつつ,主張を組み立てているというのが実際のところです。

 

そこで,勾留理由開示手続によって勾留理由を明らかにできないか,ということが問題となります。

 

2.勾留理由開示の根拠と手続

憲法34条後段には,

「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」

と規定されています。

つまり,勾留理由開示は,憲法に根拠があるということです。

 

そして,被疑者(被告人),弁護人だけでなく,配偶者や親族等の利害関係者も,裁判所に対し,勾留理由の開示を請求することができます。

ただし,1回の勾留につき,1度の請求しか認められていませんので,タイミングの判断が重要になります。

 

なお,法律上,原則として,被疑者(被告人)と弁護人が裁判に出頭することが義務付けられていますが,病気その他やむを得ない事由で出頭できず,被告人にも異議がないときには,例外的に被告人は出頭しなくてもよいことになっています。

 

具体的な開示の手続としては,まず,法廷において,裁判所から勾留理由の開示があります。

これに対し,弁護人が,その内容についてさらに詳しい説明を求めます(求釈明)。

その後,被疑者(被告人),弁護人,その他請求者が,勾留の理由等について意見陳述をします。

意見陳述の時間は,規則により1人10分以内と規定されています。

 

3.開示すべき理由の程度

裁判所がどの程度の理由を開示すべきかについて,明確な規定がありません。

弁護人としては,どのような証拠につき,どのような方法・理由で罪証隠滅がされると考えているのか具体的に説明してほしいところです。

しかしながら,実務では,捜査に支障を来たすなどを理由にして,具体的な理由が述べられることは少ないです。

そのため,開示手続が利用されることはあまりないのが現状です。

 

4.そのほか期待できる効果

意見陳述の内容は,裁判所の調書に記載されます。そのため,被疑者(被告人)の主張や,取り調べの状況等を供述させることで,そのときの供述内容を証拠化することができます。

また,事実上の効果というべきものですが,開示手続は公開の法廷で行われますので,面会が制限されているご家族などが傍聴に来ていただければ,顔をあわすことができます。

賭け麻雀と税金について

 税務判例入門つい先日,東京高検の黒川弘務検事長が,緊急事態宣言で外出自粛要請がなされている中,賭け麻雀を行っていたことが発覚し,辞職に追い込まれるという出来事がありました。

 賭け麻雀は,賭博罪に該当しますが,勝ったお金についての税金はどうなるでしょうか。

 違法なことを理由とする所得であっても,現に収入が存在する以上は,所得税の対象となります。

 所得税法では,事業所得,給与所得,一時所得,雑所得など,所得の種類によって,必要経費の範囲など課税のあり方が異なります。

 賭け麻雀による所得については,事業所得,一時所得,雑所得が問題となります。

 麻雀にはプロがいますが,彼らは別に賭け麻雀を行っているのではなく,大会の出場費や賞金,レッスン料,麻雀雑誌の原稿料等で収入を得ているものと思われます。

 それらによる収入は事業所得と考えられます。

 プロ雀士とは異なり,昔の博徒のように,賭け麻雀を職業としている人はどうでしょうか。

 「事業所得」という考え方もあるでしょうが,判例では,事業とは,社会通念上の職業といえるものでなければならないとされています。

 賭け麻雀で収入を得る職業が,果たして社会的認知を受けているか,また実際にそんな人が多くいるとは思えないのではないか,ということからすると,「事業所得」とは認められない可能性が高いでしょう

   なお,例えば暴力団が,賭場を設営して,継続的に人を集めて賭け麻雀を行わせ,そこから寺銭を取っていたような場合には,賭博開帳図利罪が成立しますが,その場合の設営者の所得は,「事業所得」となる可能性が高いといえます。

 さて,一般的には,賭博による収入は,偶然に得た棚ぼた的なものであるとして,「一時所得」に該当します。

 一時所得は50万円までは非課税で,50万円を超える額については,その2分の1が所得税の対象となります。

 一時所得の場合は,その都度,単発で得た所得が問題になりますので,年間のトータルの所得が問題になるのではありません。

 賭け麻雀の場合は,通常は,一日に半荘を何回か行って,最後にトータルの収支で,金銭のやり取りをすることが多いと思われます。

 ですから,私見では,その日の最後のゲームが終わって,受け取った金額が一時所得に該当するものと考えます。

 もし,一回一回の半荘ごとに金銭をやりとりしているのであれば,その都度,一時所得になるでしょう。

 一時所得の必要経費は,その所得を得るのに直接必要な支出に限られますので,賭け麻雀の場合はせいぜい,雀荘に支払ったゲーム代くらいかと思います。

自宅で行っている場合には,ほとんど必要経費は認められないでしょう

 また,別の機会に負けてしまって,支払ったお金は,以前に勝って得たお金と結びつくものではありませんので,必要経費にはなりません。

 ですから,年間トータルでは損をしていても,収支がプラスであった日があれば,それらのプラスだけが合算されて所得になりますので,合計が50万円を超えていれば,課税の対象になります。

 負け金は必要経費にはならないのです

 では,しょっちゅう賭け麻雀をやっていて,ほとんどプラスであるという人の場合も,「一時所得」と考えてよいでしょうか。

 この点,馬券の払戻金についてはずれ馬券の購入費を必要経費と認めた最高裁判例が参考になります。

 同判例によれば,「行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して,営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であれば,雑所得として,年間のトータルに課税する,すなわちはずれ馬券の購入費を必要経費として認めるとされています(最高裁平成27年3月10日判決)。

 賭け麻雀の場合も,ほとんど職業に近い形で,毎日のように繰り返し行い,プロ雀士にも匹敵するほどの技量があって,収支もほとんどプラスなどの事情があれば,「雑所得」に該当する可能性があります。

 その場合には,負け金も必要経費となり得ますが,普通の人で,上記の条件を満たす人はほとんどいないのではないでしょうか。

 さて,件の検事長は,新聞記者から取材を受ける立場で,接待麻雀としてわざと勝たしてもらっていた可能性もあります。

 その場合は,偶然によって得た所得ではないので,一時所得には該当しません。

 取材を受ける対価,もっと進んで情報提供の対価ということであれば,収賄罪や,国家公務員法違反(秘密漏洩)が成立する可能性もありますが,所得税との関係では,「雑所得」に該当するでしょう。

 以上のように,賭け麻雀によって得たお金にも,税金がかかります。

 ただ,そもそも賭博は違法な犯罪で,勤務先における懲戒の対象になるだけでなく,時には逮捕,起訴されることもあり得ます。

 「学生時代にはよくやった。」,「みんな,やっている。」などの安易な気持ちで行うことは禁物といえるでしょう。

文責:中村和洋

特別養子縁組について


弁護士の髙田です。

最近のニュースは新型コロナウイルスに関する暗い話題ばかりですが,そんな中,タレントの武内由紀子さんが2度目の特別養子縁組に向けて,生後9日目の女児を迎え入れたことを発表されました。

とても幸せそうな家族写真が印象的で,これからの家族のあり方というものを考えさせられます。

そこで,今回は特別養子縁組制度についてみてみましょう。

 

日本の養子縁組制度は,元の親子関係を存続させたまま新たに形成する養親子関係を併存する(子からみれば,法律上にも実親と養親が併存する)普通養子縁組が主流ですが,特別養子縁組では,元の親子関係を断絶して新たに実子と同視する法律上の親子関係を創設する点に特徴があります。

養子となる子の福祉を重視して,諸外国の制度を参考に昭和62年の法改正で新設されました。

最高裁判所がまとめる司法統計によりますと,年間300件程度だった成立件数がここ数年は500件を超えるまでになっています(ただし,米国では実親との関係が終了する養子縁組が,年間10万件以上成立しています)。

元の親子関係を法的に断絶するということは,実親の親権を消滅させるということにとどまらず,実親からの相続権も失います(普通養子の場合は,実親からの相続権が消滅しません)から親子双方にとって重大な効果が生じます。

しかも,そのような効果を容易に取り消すことになっては法的安定性の問題が生じますから,ごく限られた場合を除いて離縁することも認められません。

そのため,特別養子縁組が成立するためには,家庭裁判所の審判を要する厳格な要件が設けられてきました。

しかしながら,厚労省の調査によると要件が厳格すぎるなどの理由で特別養子制度を利用できなかった事例が多数存在することが明らかになりました。

そこで,特別養子縁組制度の利用を促進するため,①特別養子縁組制度の対象年齢を拡大し,②家庭裁判所の手続きを合理化することで養親候補者の負担軽減を図ることを目指して民法や家事事件手続法などが改正され,今年の4月1日から施行されています。

従前は,特別養子縁組成立の審判の申立時点で養子候補者が6歳未満であること(例外的に6歳に達する前から養親候補者が引き続き養育していた場合には8歳未満であること)が要件となっていましたが,児童福祉の現場等からは,年長の児童について特別養子制度を利用できない,という指摘があがっていたそうです。

たしかに,幼い頃からの養育を開始した方が実質的な親子関係を形成しやすいという面はあるものの,小学生以上の子について特別養子として迎える余地がないというのでは制度の間口が狭く,制度を利用しにくかったといえるでしょう。

そこで,改正後は審判申立時における上限年齢を原則として15歳未満として拡大しました。

また,従前の手続きでは,家庭裁判所において,実親による養育が著しく困難であること(実親の経済事情や年齢等を踏まえた養育能力,虐待の有無),実親の同意,養親候補者による6か月以上の試験養育の結果等,さまざまな事項を一括して審理する仕組みとなっていました。

しかし,これでは実親による養育状況が問題ありと認定されるのか未定のまま,養親候補者が試験養育をしなければならないことや,審判が確定するまでの間,実親による同意が撤回されるかもしれないという不安定な状況が続くことが問題とされていました。

そこで,改正後の手続きでは実親による養育状況及び同意の有無等を判断する審判と,養親子のマッチング状況を判断する審判が分離された二段階手続きが導入されました。

改正後は,まず,児童相談所長や養親候補者から,実親による養育状況及び実親の同意の有無等を判断する第1段階の審判(確認のための審判)を経た後,試験養育状況から養親子のマッチング状況を判断する第2段階の審判(成立のための審判)によって特別養子縁組が成立することになります。

この改正により,実親は第2段階の審判に関与せず,同意を撤回することもできなくなりましたし,第1段階の審判で実親の養育状況に問題があるという家庭裁判所の判断を経た後に,養親候補者が安心して試験養育を開始することができるようになりました。

さまざまな理由で実親と暮らすことのできない子が多くいる中で,昨今は晩婚化などを理由として子に恵まれないカップルも増えています。

法改正により利用しやすくなった特別養子縁組制度によって,日本でも新しい家族の形が広がるのかもしれません。

 

民事執行法の改正について


弁護士の荒木誠です。

現在,新型コロナウイルスにより日本中が深刻な影響を受けている状況にありますが,4月1日から改正民法が施行されます。

また,4月1日は,改正民事執行法の施行日でもあります(一部例外はあります)。

今回の民事執行法の改正は,債務者の財産調査について大きな影響がありますので,ご紹介します。

 

1 強制執行と財産調査

次のような事案で検討してみます。

①Aさんが,Bさんに対し,100万円を貸した。

Bさんに返済を求めても,「待ってほしい」と言って応じてくれない。

③やむなくBさんに対して裁判を起こしたが,Bさんは裁判に欠席した。

 

このようなケースでは,通常,そのままAさんの請求を認める判決が出されます。

しかし,判決が出ても,裁判所がお金を払ってくれるわけではありませんので,次に,強制的にお金を取り立てる手続の申立てをしなければなりません。

これが強制執行の手続です。

 

そして,強制執行では,Bさんの特定の財産を差し押えて取り立てることになるため,Bさん名義の預貯金,不動産などがどこにあるかを知っている必要があります。しかも,預貯金の場合には,支店名の情報も必要になります。

 

しかし,通常,債務者は,債権者に財産情報を教えることはありませんので,Aさんが自力でBさんの財産を調査することは難しいといえます。

 

そのため,これまでは弁護士が依頼を受けて,弁護士会を通じた照会を行って預金口座などの情報を取得することが多かったかと思います。しかし,制度上,十分な情報が得られない場合もありました。

 

2 第三者からの情報取得手続の新設

そこで,今回の改正により,第三者から債務者の財産情報を取得する手続が新たに3つ新設されます。

なお,いずれの手続も強制執行開始のための要件が備わっていることが前提になりますので注意が必要です。

 

①預貯金に関する情報の取得

これは,銀行等の金融機関から情報を取得する手続です。

取得できる情報には,預貯金の残高のほか,店舗名も含まれていますので,どの支店に口座を持っているかも把握することができます。

②不動産に関する情報の取得

これは,登記所から情報を取得する手続です。

これにより,債務者が所有者となっている土地や建物に関する情報を取得できます。

なお,後述の債務者の財産開示手続を先行させる必要があります。

③給与債権に関する情報の取得

これは,債務者の給与の支払先から情報の提供を受けている市町村などの公的機関から情報を取得する手続です。

これにより,債務者がどこに勤務しているかがわかりますので,給与債権を差押えることができます。

ただし,勤務先情報は高度なプライバシー情報であるため,養育費を請求する権利や,交通事故の損害賠償請求権などといった限られた請求権についてのみ申立てが認められています。

また,この手続についても,後述の債務者の財産開示手続を先行させる必要があります。

 

3 財産開示手続の見直し

民事執行法には,従来から債務者の財産開示手続という制度がありました。

これは,債務者を裁判の場に呼び出して,財産内容を自ら申告させて情報を得るという制度です。

 

しかし,債務者が裁判に出頭しなかったり,虚偽の陳述をしたとしても,罰則が30万円以下の過料に留まっていたため,あまり利用されていませんでした。

そこで,不出頭等があった場合には,6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰を科すなどの改正がなされ,強制力を担保しようとしています。

 

4 まとめ

以上述べたように,今回の民事執行法改正により,債務者の情報取得手続の選択肢が増えることになりました。

実際に制度が動いてみないとわからないところは多いですが,依頼者の権利実現のために,積極的な利用を検討したいところです。

 

 

 

バンビシャス奈良


8leHXF8z_400x400このたび,弊所は,Bリーグというプロバスケットのリーグに所属している「バンビシャス奈良」のサポートカンパニーとなりました。

最近では,八村塁選手の活躍でバケットボールに特に注目が集まっおり,日本でもBリーグが人気だそうです。

バンビシャス奈良を2012年に立ち上げた加藤真治社長は,奈良高校,京都大学の出身で,銀行員を経て,一念発起され,仙台でのプロバスケットチームの立ち上げに協力されたそうです。

その後,故郷の奈良県にもプロバスケットチームを,とのことで,奈良県に戻り,苦労に苦労を重ねて「バンビシャス奈良」を設立されたとのことです。

実は昨年以降,「バンビシャス奈良」は財政難のためプロリーグ陥落の危機にありましたが,ロート製薬を新たにスポンサーに迎えて,今年1月にその危機を脱しました。

私も,もともと母親が奈良県出身というご縁もあり,また加藤社長とは同い年で地域応援の気持ちから,「バンビシャス奈良」を応援することにしました。

といっても,ユニフォームに名前を出していただくほどではなく(それには何千万円もかかります),パンフレットに広告を載せたり,チケットを定期的に購入するという小さな貢献です。

それでも精一杯応援を続けたいと思っておりますので,皆様も,是非ご注目ください。              文責 中村和洋