ギャンブルと税金
- 2013年12月25日
- 税務・行政
競馬に限らず,ギャンブルによる所得を得た場合には,税金はどうなるのでしょうか。
例えば暴力団が,違法なカジノや野球賭博などを主催している場合,その主催者と客,それぞれに税金がかかります。
違法な所得であっても,人の担税力を増加させる利得はすべて所得になるというのが,通説であり,判例でもあります。
賭博の主催者については,利益を得る目的で,反復・継続して賭場を開催しているといえるので,事業所得として課税されます。
過去にも,実際,このような暴力団に対し,事業所得として課税された事例があります。
その場合,賭場を開催するために必要な経費は,必要経費として控除されることになります。
これに対して,客として参加した者に対する税金はどうなるでしょうか。
この点,租税法で最も利用されている教科書の著者で,この分野の最大の権威ともいえる金子宏東京大学名誉教授が,その論文中で,指摘をされています。
これは,「テラ銭と所得税-所得の意義,その他所得税法の解釈をめぐって-」(租税法理論の形成と解明・上巻434頁)という論文です。
同論文で,金子名誉教授は,賭博による利得が一回的・偶発的なものである場合には一時所得に属し,継続的に発生している場合には雑所得に該当すると指摘されています。
一時所得というのは,営利目的による継続的行為によって得た所得などを除く,偶発的な所得のことを指します。
賭博は,偶然に支配される面が非常に大きいものですが,それでも,常習で賭博を行うような場合には,営利,つまり利益を得ることを目的として,その行為を繰り返していることは明らかですので,一時所得ではなく,「雑所得」に該当するのです。
また,賭博行為は,得をしたり,損をしたりということを繰り返します。
「雑所得」として認められる場合には,その行為に関連する損失(つまり負け金)については,経費として控除されます。
今回,裁判で問題となっている「競馬」は,もちろん違法な賭博ではありません。法律によって認められた適法な娯楽・スポーツです。
馬券を買うこと自体は,道徳的に悪いことでもありません。
違法な賭博によって得た利益ですら,それを継続すると雑所得として損失が控除できるのですから,競馬などの公営ギャンブルについても,異なる解釈をすべきではありません。
また,昭和46年4月23日の参議院大蔵委員会で,当時の吉國二郎国税庁長官は,「ギャンブルの所得は一時所得であるが,常習でやっていれば事業所得になる。」という発言をしています。
さらに,同長官は,「馬券の払戻金を受ける人がいても,一つ当てるために十枚買っていたり,次のレースで負ける人もいるので,どれくらい儲けている人がいるかは分からない。」と,つまり,外れ馬券を所得から差し引くことを前提とする発言もしているのです(国会会議録検索システム参照 http://kokkai.ndl.go.jp/)。
このように,著名な学者の意見や,国税庁のトップの学者の発言からも,一回限りではなく,年間を通して継続的にギャンブルを行っている場合には,トータルの利益に課税するというのが,所得税法の正しい解釈といえるでしょう。