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整理解雇の4要件とは


51RXrEyqbVL__SS500_企業の経営が不振になったり,経営を合理化するために,やむを得ず人員削減をする場合があります。

これを,整理解雇といいます。

今回の記事では,どのような場合に整理解雇ができるのか,解説いたします。

そもそも整理解雇については,労働基準法などに直接の法律の定めはありません。

また,最高裁の判例でも,明確に述べたものはありません。

労働基準法などで労働者の地位は厚く保護されていますので,自由に解雇はできません。理由の十分でない解雇は,解雇権を濫用したものとして無効となる場合があります。

整理解雇についても,下級審の裁判例の集積によって,解雇が認められるためには,以下の4つの要件が必要とされています(菅野和夫「労働法・第10版」566頁など)。

①経営不振など,人員削減の必要性があること

 ②希望退職を募るなど,解雇回避努力義務の履行していること

 ③被解雇者を選ぶに当たって合理的な基準を設定していること

④労働組合や従業員に対する説明を十分に行うなど相当な手続をとっていること

過去の裁判例では,これら4つの要件は,どれもきちんと満たされなければいけないとして厳格に解される傾向がありました(4要件説)。

整理解雇は,労働者にとって経済的・精神的に大きな打撃を与えるものであり,また,労働者に責任がないのに使用者の都合により一方的なされるものであることを重視していたのです。

しかし,バブル崩壊後の長期間かつ深刻な経済変動の下で,近年,工場閉鎖や事業部閉鎖などの部門単位の整理解雇が増えています。

また,アウトソーシングによる事業の効率化や国際競争力強化の要請など,企業にとって多様な面で整理解雇を行う必要性が高まってきました

さらには,グローバル社会の到来により外国資本の増加による労働力の流動化が進んでいる実態もあります。

このような中で,最近の裁判例においては,上記の4つの事項については,必ずしも全部が厳格に満たされなければならないというものではなく,総合的に判断して,やや緩やかに解雇の有効性を判断するという考え方が主流になりつつあります(4要素説。CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件・東京高裁平成18年12月26日判決など多数)。

実際,人員削減の必要性には様々な類型のものがあり,使用者側の希望や体制等の関係で,実施できる解雇回避措置にも様々な制約が伴うので,事案に応じたきめ細かい判断を必要とするとの指摘がなされています(白石哲編「労働関係訴訟の実務」319頁など)。

また,平成20年にはリーマン・ショックによる全世界的な不況が生じ,平成23年3月に起こった東北沖地震の影響もあって,現在,企業の置かれている環境は,一層困難なものとなっています。

このような背景から,整理解雇の有効性は,以前の裁判例よりは,やや認められやすくなってはきています。

しかし,それでも,具体的な事案に応じて,解雇を回避するための努力をしたかや,きちんとした説明や協議をしたのかについては,やはり深刻な争いになることが多いです。

解雇を実施しようとする場合には,紛争になる前に,整理解雇の理由があるかを緻密に検討した上で,解雇せざるを得ない理由の裏付けとなる書類を整え,また,労働組合らへの説明の状況を議事録などにするなど,きちんと証拠に残しておく必要があるといえるでしょう。