PAGE TOP ▲

Archive for 11月, 2020

薬物依存症について

金曜日, 11月 27th, 2020

drug_yakubutsu_mayaku_ranyou弁護士の髙田です。

今回は,薬物依存症についてお話します。

私は,プロボノ活動の一環として,毎年,数件の国選弁護事件を担当してきました。

国選弁護人として選任される事件は原則として,弁護士が内容をみてから選べるものではないので,必然的にさまざまな種類の事件を扱うことになります。

大阪で国選弁護を担当しているとどうしても再犯率の高い薬物事件を割り当てられる機会が多くなってしまいます(令和2年版警察白書によると,令和元年中に薬物事犯で1万3364人が検挙されています)。

 ここで改めて説明するまでもなく,覚醒剤などの違法薬物は仕事や身近な人の信頼など,有形・無形を問わず多くのものを失います。

薬物事犯で逮捕された人に警察署で接見すると,「前に捕まった後,もうやめようと思っていた」,「やめられたと思っていたのに,生活がうまくいかなくなって,つい手を出してしまった」などと後悔の気もちを伝えられる一方で,半ば諦めの言葉を口にする人も少なくありません。

「なんとか違法薬物から脱却して,今度こそは安定した生活を送ってもらいたい」と願っている弁護士としては,なんとも忸怩たる思いがする瞬間です。

そうした中で,「今度こそ薬をやめたいので,社会復帰した後には支援団体のお世話になりたい」という前向きな希望を伝えてくる人もいます。

もちろん,裁判で有利にみられたい,という動機による場合もありますが,本人がそうした希望をもっているのであればその気持ちに賭けてみたい,とも思うのです。

そうした場合,本人の話をよく聞いて特に意思が固そうであれば,弁護人として薬物依存症脱却支援団体に相談をお願いすることがあります。

 先日も大阪で活動されている支援団体を訪問して,相談に応じていただきました。

そちらではまず,「薬物依存症が病気であり,もはや自分自身の努力だけでは脱却することができない」ということを十分に理解させてから,薬物依存からの脱却を願う同じ境遇の仲間とともにグループカウンセリングなどのプログラムを地道に続けてもらっている,のだそうです。

社会復帰した後に,自ら,自由が制限される環境に飛び込むのですから,プログラムを継続することは利用者にとってとても厳しいものでしょう。

それでも真面目にプログラムを続けた人に関しては再犯率がとても低いとのことでしたので,私としても希望を抱くことができました。

 逮捕・勾留から裁判までの短い弁護活動の中で国選弁護人としてできることは限られます。

そうした中で本人に依存症脱却の決意をさせるためにも,できるだけ身内の方と連絡をとり,法廷で情状証人として語りかけてもらうようにしています。

「今度こそは立ち直ってもらいたい」と強く願っている人のためにも,薬物依存症の方には二度と同じ過ちをしないという決意を大切にして努力を続けてほしいものです。

フリー素材と利用規約

水曜日, 11月 4th, 2020

saiban_small_no_gavel弁護士の荒木誠 です。

最近,当ブログでもイラストを使用しようと考え,色々なフリー素材を探していたところ,やはり「いらすとや」のフリー素材は種類も多く,見た目的にも使いやすいかなと思っています。

法律関係では,裁判のイラスト(冒頭のイラスト)や弁護士のイラストなどは,色々な場面で使えそうです。

ところで,素材を使用するに当たって,サイトの利用規約を確認したのですが,利用者としては,いくつか注意すべき点があるなと感じました。

そこで,今回は,その利用規約も確認しながら,フリー素材の利用規約について考えてみます。

 

1 フリー素材と著作権との関係

一口にフリー素材といっても,単に無料で使える(ロイヤリティフリー)という意味で言っている場合もあれば,著作権フリーという意味で言っている場合もあるかと思います。

 つまり,フリー素材だったとしても,必ずしも著作者が著作権を放棄しているとは限りません。そのため,著作権が認められる素材については,利用方法によっては,著作権法違反となる可能性があります。

 「いらすとや」においても,素材は無料で利用できるものの,著作権は放棄していない旨記載されています。

 

2 利用規約とは

 フリー素材の作成者としては,多くの方に利用してもらいたいと考えるはずですが,想定外の使われ方をされては困るので,予め利用規約を定めて,利用方法を限定した上で利用を認めることが一般的かと思います。

 この点については,著作権法63条において,著作権者は,他人に対し,その著作物の利用を許諾することができるとし,許諾を得た者は,その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内に於いて著作物を利用できる,と規定されています。

 ここで規定されているように,あくまでも,許諾された方法や条件の範囲内においてのみ利用が許されているに過ぎませんので,その範囲を超えた利用については,著作権法違反となる可能性がありますから,注意が必要です。

 

余談ですが,利用者に利用規約を確認させる方法としては,いろいろなパターンが考えられます。

例えば,①サイトのフッターに利用規約へのリンクを設置するパターン,②サービス利用の申込画面に利用規約を表示し,同意のボタンをクリックさせるパターンなど様々です。

サイトの運営側としては,きちんと利用規約を確認して利用してほしいと考えるのが通常かと思いますが,あまり手間が増えると利用者にとっては不便になりうるので,そのバランスが難しいところかと思います。

 

3 利用方法について

 利用方法としては,大きく分けて,個人が私的に利用する場合,商用利用をする場合が考えられます。

 どのような場合が商用利用に当たるかについては,サイトごとに考え方は様々あるようですが,大まかにいうと,利益を得る目的で使用される場合が想定されていると思われます。

 そして,商用利用については,サイトによっては別途費用がかかる場合もありますので,事前に利用規約を確認することが重要です。

 

例えば,「いやすとや」では,商用利用に関しては,無償で利用できる点数に制限を設けており,「書籍・チラシ・パンフレット・ウェブ・テレビ・パッケージ・電子書籍・動画・ソフトウェア・パワーポイントでのプレゼン・卒業アルバム・名刺など、媒体を問わず1つの制作物につき20点(重複はまとめて1点)まで商用利用をすることができます。」(よくあるご質問)と記載されています。

また,ここでいう制作物の個数をどう考えるかという点については,「一般的な企業のホームページや情報をまとめたサイトのように制作後に大きな変化のないサイトについては1サイトにつき20点までとなっております。商用のサイトであっても、宣伝以外のユーザーにとって有益なオリジナルのコンテンツが追加され続けるサイトの場合は、1記事ごとに20点までご利用いただけます。ただし無料で閲覧できるオープンなサイトに限ります。」(よくあるご質問)と記載されています。

そうすると,当ブログの記事のようなコンテンツについては,1記事が1つの制作物であると考えて,その1記事ごとに20点まで利用できると考えてよさそうです。

 

そのほか,リンクやクレジット表記の要否,加工の可否といった利用方法についても,サイトごとに異なりますので,事前に利用規約を確認する必要があります。

 

4 まとめ

 ネット上のフリー素材を利用するときも,事前に利用規約をきちんと確認して,正しく利用するように注意してください。

 なお,ネット上でフリー素材だとして表示されているものであっても,実際にはフリー素材ではない可能性もありますので,ちゃんと素材を提供する元のサイトを確認してから利用するようにしましょう。

 

 

 [l1]冒頭のイラストデータ

https://www.irasutoya.com/2013/07/blog-post_1377.html