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Archive for 2月, 2016

弁護士会将棋大会について

火曜日, 2月 16th, 2016

969899_494282547315301_2062973533_n 大阪弁護士会では,毎年,将棋大会が開催されています。

 有段者のA級と,級位者のB級に分かれて,トーナメント方式で優勝を競います。

 数年前に,私はB級で出場し優勝させていただくことができました。

 その後は,A級に参加していますが(昨年は都合がつかず,不参加),なかなか,勝ち進むことは難しいです。

 古いデータを整理していると,優勝者の弁として,数年前に大阪弁護士会の会報に載せた原稿のデータを発見しました。

 せっかくですので,このブログで,過去の栄光を思い出しつつ(!?),ご紹介させていただきます(当時の文章から,対局者の氏名を仮名にするなど,少し修正いたしました)。

 

 

        優勝者の弁

  このたび,将棋B級で優勝をさせていただいた中村和洋です。

 今回の決勝戦は,一昨年の前回と同じくF先生との対戦でした。

 前回の対戦では,私の四間飛車・美濃囲いに対して,相手の居飛車穴熊でした。

 しかし,そのときは私が一方的に攻め倒されてしまい,全くいいところのない将棋でした。

 その反省から,やはり,こちらも囲いを堅くして先攻しなければならないと思いました。

 そこで,この一年間,若手の広瀬章人プロの本を読んで四間飛車穴熊の定跡の勉強をしました。

 また,5手詰めなどの詰将棋に勤しんでまいりました。

 その上でのぞんだ今回の決勝では,予想通り,互いにガチガチの穴熊に囲い合うという対戦となりました。

 私が先攻しようと思っていたのですが,相手の素早く,力強い攻めに防戦一方となってしまい,なかなか敵陣に迫ることができませんでした。

 しかしながら,遅い時間であったことと対局時間が長引いたことが影響したのか,相手が中盤で角をタダで損をするという失着を指されました。

 そこで形勢が逆転し,後は慎重に指し続けたことで,何とか勝利を物にすることができました

 2時間の大熱戦でした。

 私は,以前検事をしていたときから,将棋が好きで,大山康晴15世名人の将棋に憧れていました。

 最初のうちは,四間飛車を中心に,むしろ受けを重視した指し方をしていました。

 その後,弁護士として厳しい競争環境に身を置くようになった結果,棋風が積極的に変化したようで,最近はどんどん攻める手を好むようになりました

 相手の手を先の先まで読んで,対応を考えるということでは,将棋は,弁護士の仕事に通じるところがあります。

 また,敗戦のときに,自分の口ではっきりと「負けました。」と言わなければならないという潔いところが,すばらしいと思っています。

 年齢の離れた人同士でも,すぐに打ち解けて楽しめる娯楽ですし,わかりやすい入門書もたくさん出ており,また,インターネットで対戦も楽しめます。

 皆さまにも,一生楽しめる趣味として,将棋をぜひともお勧めします!!

書評(体系租税法)

金曜日, 2月 5th, 2016

体系租税法2015年12月30日に水野忠恒教授の「体系租税法」が発行されました。

これは,マイナンバー制度などのトピックにも言及されており,最新の教科書といえます。

水野忠恒教授は,日本を代表する租税法学者で,この教科書は索引を含めて935頁にもなる大部なものです。

租税法の教科書といえば,金子宏教授の「租税法」が著名です。

しかし,水野教授の「体系租税法」は,それとは,また違った特徴のある本で,大変参考になります。

特に裁判例について事案や判旨について詳しい記述がなされています。

また,国際課税アメリカ合衆国などの外国の法制度の記述も詳細です。

租税法を学ぼうとする法律家にとって,座右に置くべき書籍といえるでしょう。

また,はずれ馬券裁判についても,他の教科書よりも詳しい記述がなされています。

ただ,水野教授は,最高裁判例とは反対の立場です。

同書では,「競馬を見るわけでもなく,儲けのためだけに馬券を買っている場合であれば,なおさら,収入と経費との関係を吟味すべきであり,外れ馬券が勝馬投票馬券に関連したものではなく,必要経費とみるべきではないと思われる。」と述べておられます(同所244,245ページ)。

その前提として,水野教授は,この裁判例について,馬券購入行為に所得源泉性を認め,特殊な投資行為としたものと理解されています。

確かに一審の大阪地裁判決は,被告人の馬券購入行為についてFX取引等と類似する一種の投資活動と理解し,所得源泉性が認められるという理由付けをしていました。

しかし,その後の大阪高裁及び最高裁の判決では,投資活動と評価したものではありません。

これらの判決は,一連の馬券購入行為を,端的に文理に照らして「営利を目的とする継続的活動」であるとしたものです。

その上で,雑所得に該当するとし,外れ馬券も含めた全馬券の購入金額が必要経費に該当するとしたものです。

ですから,水野教授の批判は,最高裁判決,高裁判決に対するものとしては,的を射ていないように思われます

また,諸外国の法制度で,このような馬券の払戻金についての課税がどうなっているのかについても(はずれ馬券も経費となるアメリカや,的中馬券に課税のかからないフランス以外の例えばドイツやイギリスなどの制度ではどうなっているのか),是非,言及してほしかったところです

ただ,先日の東京地裁判決では,外れ馬券を必要経費と認めない判断が下されたこともあり,今後,競輪,競艇などでも同様の問題が生ずる可能性もあるので,この論点についての議論はこれからも深めていく必要があるといえるでしょう。