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横目調査について


 税務調査では,納税者が金融機関に解説している口座の内容を調べることがよく行われます。これを銀行調査とか金融機関調査といいます。

 その中で,実務上,「横目調査」と呼ばれる違法な調査が行われている実態があると指摘されています(大村大次郎「バレると後ろに手が回る脱税のすすめ」彩図社・203頁)。

 横目調査とは,別件の税務調査に名を借りて,それとは無関係の第三者の口座を調査することです。

 税務調査においては,調査の必要性が認められることが要件とされており(国税通則法74条の2等),必要がないのに,一般的網羅的に銀行口座の内容を覗き見ることは,違法です。

 この点は,最高裁の判例でも明らかにされています(最高裁昭和48年7月10日第三小法廷決定・刑集27巻7号1205頁,志場喜徳郎他編「平成25年改訂国税通則法精解」大蔵財務協会・835頁参照)。

 さらに,銀行調査の場合には,他人名義のものについては原則として調査の対象になり得ず,他人名義であっても本人のものであることが客観的に明らかな場合に調査の対象となし得るという有力な見解もあります(北野弘久「税法学原論・第7版」勁草書房・315頁)。

 そうすると,銀行口座の内容という個人の経済活動や生計に関わる重大な情報について,当該口座について調査の必要性がないのに,必要性があるかのように金融機関を欺き,かつ当該名義人の同意もないまま国家機関が覗き見ることは,個人のプライバシーを大きく侵害するものです(X線検査を違法とした最高裁平成21年9月28日第三小法廷決定・刑集63巻7号868頁,GPS捜査を違法とした最高裁平成29年3月15日大法廷判決・裁判所web参照)。

 国税当局は,仮名預金や借名預金の可能性があるので,対象者の名義以外の口座も調査する必要があると判断しているようです。

 なお,現在の厳格な本人確認の制度の下では仮名預金は困難で,実際には借名預金が問題となります。

 しかし,借名預金の可能性があるから,広くどの口座でも見ることができるというものではありません。

 家族や従業員など借名が疑われる場合にはその氏名を特定して,調査する必要があります。

 私見では,対象者以外の名義の口座に対する調査が例外的に許され,適法と認められるためには,①具体的な事実関係に照らして,当該口座が真実は対象者の口座であり,仮名預金,借名預金であると疑うに足りる客観的な根拠が存在する必要があり,②金融機関に対する照会内容も,その必要性に応じて例えば第三者の名義を特定するなど調査対象を具体的かつ明確に特定したものでなければならないと考えます。

 しかし,実務上は,そのような原則は守られず,銀行口座の内容が調査官によって自由に覗き見られているようです。

 私の担当している裁判でも,横目調査が疑われたことから,調査担当者を証人尋問しましたが,担当者は,なんと守秘義務を理由に証言を拒否しました。

 しかし,そのようなことが許されては,国民の権利侵害を防止することはできません。

 国税当局はベールに包まれた金融機関調査のあり方を透明化し,違法な調査が行われないように徹底し,また,調査手法が疑われた場合には,事後的にであっても国民にきちんとその内容を説明する責任があると考えます。