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Archive for 4月, 2020

特別養子縁組について

火曜日, 4月 21st, 2020

弁護士の髙田です。

最近のニュースは新型コロナウイルスに関する暗い話題ばかりですが,そんな中,タレントの武内由紀子さんが2度目の特別養子縁組に向けて,生後9日目の女児を迎え入れたことを発表されました。

とても幸せそうな家族写真が印象的で,これからの家族のあり方というものを考えさせられます。

そこで,今回は特別養子縁組制度についてみてみましょう。

 

日本の養子縁組制度は,元の親子関係を存続させたまま新たに形成する養親子関係を併存する(子からみれば,法律上にも実親と養親が併存する)普通養子縁組が主流ですが,特別養子縁組では,元の親子関係を断絶して新たに実子と同視する法律上の親子関係を創設する点に特徴があります。

養子となる子の福祉を重視して,諸外国の制度を参考に昭和62年の法改正で新設されました。

最高裁判所がまとめる司法統計によりますと,年間300件程度だった成立件数がここ数年は500件を超えるまでになっています(ただし,米国では実親との関係が終了する養子縁組が,年間10万件以上成立しています)。

元の親子関係を法的に断絶するということは,実親の親権を消滅させるということにとどまらず,実親からの相続権も失います(普通養子の場合は,実親からの相続権が消滅しません)から親子双方にとって重大な効果が生じます。

しかも,そのような効果を容易に取り消すことになっては法的安定性の問題が生じますから,ごく限られた場合を除いて離縁することも認められません。

そのため,特別養子縁組が成立するためには,家庭裁判所の審判を要する厳格な要件が設けられてきました。

しかしながら,厚労省の調査によると要件が厳格すぎるなどの理由で特別養子制度を利用できなかった事例が多数存在することが明らかになりました。

そこで,特別養子縁組制度の利用を促進するため,①特別養子縁組制度の対象年齢を拡大し,②家庭裁判所の手続きを合理化することで養親候補者の負担軽減を図ることを目指して民法や家事事件手続法などが改正され,今年の4月1日から施行されています。

従前は,特別養子縁組成立の審判の申立時点で養子候補者が6歳未満であること(例外的に6歳に達する前から養親候補者が引き続き養育していた場合には8歳未満であること)が要件となっていましたが,児童福祉の現場等からは,年長の児童について特別養子制度を利用できない,という指摘があがっていたそうです。

たしかに,幼い頃からの養育を開始した方が実質的な親子関係を形成しやすいという面はあるものの,小学生以上の子について特別養子として迎える余地がないというのでは制度の間口が狭く,制度を利用しにくかったといえるでしょう。

そこで,改正後は審判申立時における上限年齢を原則として15歳未満として拡大しました。

また,従前の手続きでは,家庭裁判所において,実親による養育が著しく困難であること(実親の経済事情や年齢等を踏まえた養育能力,虐待の有無),実親の同意,養親候補者による6か月以上の試験養育の結果等,さまざまな事項を一括して審理する仕組みとなっていました。

しかし,これでは実親による養育状況が問題ありと認定されるのか未定のまま,養親候補者が試験養育をしなければならないことや,審判が確定するまでの間,実親による同意が撤回されるかもしれないという不安定な状況が続くことが問題とされていました。

そこで,改正後の手続きでは実親による養育状況及び同意の有無等を判断する審判と,養親子のマッチング状況を判断する審判が分離された二段階手続きが導入されました。

改正後は,まず,児童相談所長や養親候補者から,実親による養育状況及び実親の同意の有無等を判断する第1段階の審判(確認のための審判)を経た後,試験養育状況から養親子のマッチング状況を判断する第2段階の審判(成立のための審判)によって特別養子縁組が成立することになります。

この改正により,実親は第2段階の審判に関与せず,同意を撤回することもできなくなりましたし,第1段階の審判で実親の養育状況に問題があるという家庭裁判所の判断を経た後に,養親候補者が安心して試験養育を開始することができるようになりました。

さまざまな理由で実親と暮らすことのできない子が多くいる中で,昨今は晩婚化などを理由として子に恵まれないカップルも増えています。

法改正により利用しやすくなった特別養子縁組制度によって,日本でも新しい家族の形が広がるのかもしれません。