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Archive for 11月, 2018

弁護士とマーケティング

金曜日, 11月 2nd, 2018

司法試験の合格者数が増加して,法曹人口が拡大していますが,その反面,国民人口の減少に伴って事件数が減っています。

弁護士間の競争が厳しくなっていると言われており,弁護士も日常的な営業活動が必要となっています。

競争も弁護士間の切磋琢磨を産むのであれば決して悪いことではありません。

また,きちんとアピールをすることで,顧客が必要とする情報を提供することはとても大切なことです。

私は,独立してから6年目になりますが,先日,弊所のアソシエイト弁護士に伝えたことをもとに,普段気を付けていることを,2回に分けて,ご紹介します。

1 マーケティングの重要性

弁護士は,実は仕事をこなすことよりも,仕事を得ることの方が難しいです。

ですから,仕事の能力と営業(経営)の能力は,同程度必要といえます。

優秀で人柄がよくても経営に苦労している弁護士もいる反面,逆に,営業過多で仕事が追いついていない弁護士もいます。

弁護士がマーケティングに気をつかい,営業に力を入れるのはもはやMUSTといえるでしょう。

出遅れる前に一歩でも先んじることが大切です。

なお,営業が上手いことと,本来明るい性格か社交的かということとは全く無関係と思います。

むしろ友人が少ない人の方がかえって時間が多くあり(同じ友達とばかり飲むのは内向き思考。親しい人こそ,たまに会うだけで十分),営業のためのプランニングや効果的な営業を実施することができるのではないでしょうか。

2 心構え

自分を売り込むことは決して恥ずかしいことではありおません。

弁護士の仕事は絶対に人の役に立つ,自分の名を広めることは社会貢献につながるという気持を強く持って良いと思います。

日常生活において知り合った人に対しても常に自分は弁護士であり,何かのときには役に立てる存在であることを意識してください。

そのためには,自分に自信を持つことが大切です。

特に税務事件,刑事事件については,弊所の弁護士は,同じ経験年数の弁護士と比較すれば経験数がダントツに多いはずです。

基本的な事件ばかりでなく,相当難しい事件もこなしています。

若い弁護士でも,早く一人前になる人は2~3年でそうなりますが,ならない人は10年経ってもなりません。

もちろん,常に新しい事件にぶつかったとき,基本的な文献や条文を確認するなどして,基礎的な勉強を怠らないことは前提で,「根拠のある自信」が大切です。

次に,具体的な活動方法を紹介します。

3 具体的な方法

(1)事務所報など

地道ですが,事務所報,年賀状,暑中見舞いを広く送ることが大切です。

学生時代の同級生,恩師,先輩,後輩,親戚,知人,名刺交換をした弁護士,士業その他知人,できるだけ広い範囲で。

相手やその知人に実は困っていることがあって,きっかけがないので連絡できないのかもしれません。

宗教の勧誘や投票の呼びかけのような場合と違って迷惑がられることは少ないので,気を遣いすぎる必要はないと思います。

「弁護士になったからって急に連絡してきやがって。」と思う人もいるかもしれませんが,そういう人とは元々人間関係が構築できないので,気にしないことです。

(2)交流会などの参加

交流会,セミナー,懇親会,地域の集まり等には積極的に参加し,名刺交換をします。

セミナー,懇親会等は無料や安価のものではなく,費用のかかるものの方が良いと思います。

無料,安価な交流会の中には宗教の誘いや,投資関係等の営業も多く,あまり実らないことが多いです。

ただし,そういう場に出ることの経験にはなるし,100人に1人くらいはすごく良い人に出会える場合もありますので全く無駄ということはありません。

なお,会話の中で,がんばって自分を売り込む必要はありません。

話の聞き役でよいでしょう。

まずは,話しやすそうな弁護士だ,と思われるだけで十分です。

ただ,得意分野(弊所ですと,刑事関係や税務)と,相手と共通するPOINT(出身地,大学,年齢など)だけは伝えておきたいです。

そして,「何でもやってます。」とあえて言う必要はありませんし,むしろ言うべきではありません。

得意分野を絞って説明しても,相手に印象を残して「感じが良さそうだ」,「良い事務所のようだ」などと思ってもらえたら,「専門外かもしれないけど,〇〇の相談にのってもらえます?」などという連絡がきます。

(3)同業者との関係

先輩や,同期,後輩の弁護士と仲良くしてください。

特に刑事弁護や税務,行政,反社対応はほとんど取り扱われないの弁護士が多いので,弁護士からの紹介も多いのが実情です。

(4)幹事を引受ける

同窓会,同期会の企画や幹事は,機会があれば積極的に引受けましょう。

雑用を引受けて,何度か顔を合わしているだけで,「気さくな弁護士だな。」などと気にいってもらえ,仕事につながることも多いです。

もちろん,自分自身,そういった人のお世話,お手伝いを楽しんでやることが大事です。

(5)執筆など

顔と名前が,世間に知られることは効果が大きいです。

特に執筆については,積極的に行います。

本を出版しているということは,大きな信頼を得られます。

一緒に本を書いてくれる人をのぞんでいる弁護士や士業の人も多いので,自分に執筆経験あること,出版に興味があること,協力を惜しまないことをアピールすると喜ばれます。

もちろん,内容が伴い,締切りを守ることが大前提です。

(6)人とのつながりを大切に

恩師や,修習のときにお世話になった指導教官などは,折りにふれて訪ねてご挨拶をします。

礼儀としても必要なことですが,喜んでいただけますし,人とのつながりを大切にすることが何事においても基本です。

また,普段出会う人で,営業の上手な人がきっといますので,その人の真似をしましょう。

弁護士に限らず,他士業,不動産屋,保険屋さんなどです。

私が開業をしたのはちょうど厄年に近い年齢だったのですが,ある不動産屋さんから,「開業のようなめでたいことをすれば,厄はふっとぶんですよ。」と言われ,上手いことをおっしゃるなあと感心したことがあります。

弁護士会の検索サイトや,その他無料サイトへの登録,有料サイトへの登録も行いますが,インターネット広告は既にレッド・オーシャンで,広告費を多く使わない限り,効果は乏しいでしょう。

交際費については,たとえば大学の先輩におごってもらうというような特殊な事情がない限り,きちんと応分の負担をしましょう。

もしご馳走になったら,翌日必ずお礼の電話か,少なくともメールでお礼を言います。

当たり前のことではあるのですが,金払いに汚い,礼儀知らずという印象は,人間性の評価につながります。

また,知り合った会社の方と食事などをしたり,相談を受けている中で,事業内容や悩んでいることをお聞きしてみると,継続的にかかわらせていただいた方がお役に立てるのではないかと思うときがあります。

その場合,顧問契約を提案するのに遠慮はいりません。相手の方が遠慮されている場合もありますので。

「もし,お役に立てるのであれば」という意識が大切ですので,過剰な売り込みになってはいけないという自戒は大切です。

また,弁護士の仕事は紹介が命なので,士業(税理士,社労士,司法書士,行政書士,弁理士など),保険屋さん,不動産屋さん,議員秘書など顔が広く,また人からよく相談を受けやすい人とのつながりを大切にします。

普段あまり会わない,名刺交換をしただけの人であっても,事務所報を贈り続けるなど関係を維持することで,不意にお役に立てることがあります。

経済同友会,商工会議所,JC,ロータリー,ライオンズクラブ等に入ることは伝統的な方法です。

ただ,すぐ仕事につながるものではなく,楽しんで,休まず参加するのでなければ,お金と時間がもったいないです。

私はロータリーに入っていますが,人生の先輩を含め色々な経営者の方と知り合うことができ,何よりも勉強になって楽しい,と感じています。

(7)普段から種をまく

何にせよ,企画すること,こころみることが大事です。

マーケティングのアイデア(セミナー,著作など)を常に考えて溜めておくことが大切です。

私が担当し,画期的な最高裁判決をもらうことのできた馬券の払戻金についての所得税法違反事件は,たまたまホームページに載せていた短いコラムを依頼者に見つけてもらったことがきっかけです。

どんな小さな種であってもまかないと芽吹かないものだと思っています。