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ダイエット,再び


 私(中村)は,今年で48歳になります。

 以前,本ブログでダイエットのことを書きました。

 ただ,最近では,「もう,アラフィフだし,少しくらいお腹が出てたって。着物も似合うだろうし。」と考えて,夜中にお菓子を食べるなど不規則な生活をしていました。

 当然ながら体重も5キロ増え,スーツがギリギリ収まるほどのお腹周りに・・・。

 そんな中,つい先日,ロータリーの友人である,私と同い年のT社長に久しぶりに会ったところ,ものすごくすっきりとやせて,男前になっていたので,驚きました。

 以前は,はちきれそうなほど,お腹がぽっこり出ていたのに・・・。

 聞くと,お医者さんから,「このままの生活だと必ず死にます。」と言われ,一大決心してダイエットをし,十数キロの減量に成功したとのこと。

 そこで,私も刺激を受けて,彼のマネをしてT式ダイエットに励むことを決意しました。

 T式ダイエットの大きなポイントは糖質オフです(そのほかにも色々あるみたいで,今度,本を出版するそうです!)。

 とりあえず,私が採用したのは,以下の方法。

 ・ご飯,パン,麺類,菓子類は一切食べない。 

 ・肉と野菜はたくさん食べる。お酒もOK。

 ・あらかじめジップロックに煎った大豆,おしゃぶり昆   布,煮干しを入れておいて,持ち歩き,お腹が空いたときのおやつにする。

 ・スマホと連動している体幹計(内臓脂肪や筋肉の%もわ   かる高機能体重計)で毎日,体重や体脂肪率などを計測。

 ということで,私も5月の連休明け,令和最初の平日から実践しています。

 以前やっていたレコーディングダイエットは,カロリー制限をするのでお腹が空きますし,食べた物を全部記録することで,ストレスを感じました。

 しかし,今回は,おかずはお腹いっぱい食べますし,お酒も従来どおりなので,ストレスがほとんどありません。

 カロリー制限に比べると体重が落ちるスピードはゆっくりですが,ダイエット開始から約3週間弱の5月31日現在で,1.5キロほど減量し,お腹もやや細くなりました。

 心なしか,体調も良い感じです。

 また,運動しないと筋肉が落ちます。

 さりとて,飽き性なので無理はせず,週に3回,通勤ルートを変えて遠い方の駅から出勤したり,気が向いたときに腹筋,腕立て,スクワットをしています。

 このまま続けて,8月までには5キロ減量し,自分のベスト体重に持っていきたいと考えています。

 良い結果を是非,このブログで報告させていただきます。

 

 

ペットと法律問題


 以前からペット・ブームと言われていますが,一般社団法人ペットフード協会の調査によれば,平成29年10月時点で,20代から70代における全国の犬の飼育頭数は約892万頭猫の飼育頭数は約952万6000匹と推計されているそうです。

 私(中村)も以前,犬を飼っていましたが,家族の一員のようであり,大変楽しかった思い出となっています。

 今回は,ペットを巡る法律問題を紹介します(参考文献:渋谷寛・杉村亜紀子「ペットの判例ガイドブック」民事法研究会)。

 

1.ペットの医療過誤

 獣医の医療過誤をめぐっては,以下のような判決があります。

① 糖尿病の犬を入院させながら,獣医師がインスリンを投与せず,  その結果死亡させた場合に,飼い主1人あたり30万円(夫婦で合計60万円)の慰謝料が認められた(東京地裁平成16年5月10日判決)

② 飼い猫の乳房や腹部にしこりを見つけたので,獣医師に受診させたにもかかわらず,その獣医師が生検による組織学的検査を行わなかったため,悪性腫瘍を見落とし,猫を死亡させてしまった場合に,飼い主1人あたり35万円(夫婦で合計70万円)の慰謝料が認められた(宇都宮地裁栃木支部平成22年10月29日判決)。

 飼い主にとってペットは子供同然であり,亡くしたときの悲しみは大きいものですが,,裁判で慰謝料が認められる金額は,それほど大きくはなく,せいぜい数十万円程度にとどまるようです。

 

2.ペットが第三者に危害を加えた場合

 飼い主が自宅の庭で犬を鎖につなごうとしたところ,犬が飼い主の手をかいくぐり外に出てしまい,歩いていた人にかみついて怪我を負わせた場合に,治療費や慰謝料などの損害賠償責任が認められた裁判例があります(名古屋地裁平成18年3月15日判決)。

 また,刑事責任を認めたものとして,自宅を訪れていた客が,犬がいることを知らずに裏庭にいき,そこでつながれていた犬(過去に人にかみついて怪我をさせたことがあった)にかまれて加療約5か月の傷害を負ったという事案で,飼い主に,重過失致傷罪が成立するとされた裁判例もがります(福岡高裁昭和60年2月28日判決)。

 飼い主としては,犬を散歩させたり,リードにつなぐ際には,うっかり犬が人にかみつかないように万全の注意を払うとともに,自宅でも「猛犬注意」などの立て札をするなどしておかないと,法的責任が問われる可能性があります。

 

3.賃貸住宅・分譲マンションとペット禁止の問題

 賃貸住宅の契約や分譲マンションの規約で,ペット飼育が禁止されている場合があります。

 ペット飼育禁止の賃貸住宅を賃借する際に,仲介業者の担当者からペットを飼って良いと言われていた事例について,担当者にはペット飼育を許可する権限がないとして,契約違反による解除を理由とする明渡しが認められた裁判例があります(京都地裁平成13年10月30日判決)。

 また,分譲住宅については,マンションの規約変更により犬猫の飼育が禁止された場合に,新たに犬を飼い始めた飼い主に対して,犬の飼育を禁止する判決が言い渡された裁判例があります(東京地裁平成27年4月9日判決)。

 

4.動物愛護管理法,鳥獣保護管理法

 動物愛護管理法という法律があります。

 この法律では,愛護動物をみだりに殺したり,傷つけた場合には,2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処するとされています。

 愛護動物とは,「牛,馬,豚,めん羊,山羊,犬,猫,いえうさぎ,鶏,いえばと,あひる」,「その他,人が占有している動物でほ乳類,鳥類又はは虫類に属するもの」とされています。たとえば,野良猫であっても,みだりに殺傷することは犯罪になります。

 また,生物の多様性や環境を保護するために,鳥獣保護管理法が定められています。

 野生の鳥獣の捕獲や卵の採取は,特別の許可があるなど例外的な場合を除いて禁止されており,これに違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

 私は,俳句を趣味にしていますが,籠の中のメジロ(メジロは夏の季語)について詠まれた俳句を見ると,ついつい「捕獲の許可はどうなってるんだろう。」と気になってしまいます。

5.まとめ

 犬や猫を飼っている方は大勢おられると思いますが,思わぬところで法的な責任が発生する場合がありますので,注意が必要です。

パロディと知的財産権


ねこねこ日本史私は,日本史や世界史が大好きです。

NHKでアニメになっている「ねこねこ日本史」は,可愛い猫のキャラクターが歴史上の人物として活躍するもので,大変面白いものとなっています。

以前,タレントのデーモン閣下が,「ねこねこ日本史」に登場した高杉晋作のことでNHKに抗議をしたとの報道がありました。

そのキャラクターが,デーモン閣下風のメイクや服装であったことについて,自らの許諾を得ていない権利侵害であるとしたのです。

これは,いわゆるパロディが権利を侵害することになるのかという難しい問題です。 

1.パロディとは

パロディとは,文学作品や美術作品,あるいは特定の人物を模して,ユーモアや風刺等を表現するものです。

 

日本では,本歌取り・替え歌・川柳・狂歌等の慣習があります。

また,最近では漫画やアニメ作品の登場人物を題材にした同人誌が多数発刊されています。

そのため,日本はパロディが盛んで,かつ比較的寛容な風土があるといえるでしょう。

 

2.パロディと著作権

パロディは他人の著作物等を利用して創作行為をするものですから,著作権法に違反しないでしょうか。

パロディが著作権に違反しないかどうかは,直接定めがありません。

学説の中には,表現の自由を守る見地から一定の場合にはパロディは違法ではないとするものがあります。

具体的には,

①利用される原作が著名であること,

②著作物そのものを揶揄,嘲笑するものではないこと,

③原作を通じて社会的に固定されている観念の破壊,風刺,揶揄であること,

④芸術的,思想的な問題提起を目的とするものであること,

⑤利用する著作物が独立性をもつものであること,

⑥利用する側の著作物が芸術的,思想的に優れたものであること,

⑦必要最低限のやむを得ない改変であること

を要件にあげています(染野啓子「パロディほごの現代的課題と理論構成」法律時報55巻7号41頁)。

ただ私見では,④,⑥の芸術的,思想的な問題提起という要件は,主観的判断に流れやすいので,あまり厳格に解すべきではないと思いますし,⑦の最小限の改変という要件も必ずしも必要ではないと思います。

 

例えば,作家の筒井康隆の作品に,「日本以外全部沈没」という小説があります。

これは小松左京の「日本沈没」のパロディですが,発想や登場人物の一部に共通するものがあるものの,ストーリーが完全にオリジナルな作品となっています。

ギャグ小説としての価値も高く,適法なパロディと認められる例だと私は考えます(なお,実際には小松左京の許諾を得ていたそうです)。

3.パロディと商標権

商標権との関係では,最近の判例で,「フランク三浦」事件があります(最高裁平成29年3月2日決定)。

これは,「フランク三浦」という安価な腕時計があり,これが著名な「フランク・ミュラー」の商標権を侵害するものとして訴えられた事件です。

判決では,価格もデザインも相当異なり,一般の人がフランク・ミュラーとフランク三浦の時計を間違えることは考えられないとして,商標権を侵害するものではないとしました。

これは適法な「パロディ」と判断された事例であり,話題になりました。

4.パロディと肖像権

冒頭で紹介したデーモン閣下と「ねこねこ日本史」の事例はどうでしょうか。

これはデーモン閣下の著作物ではなく,そのメイク,服装といった外見の特徴をパロディとしたものです。

メイクや服装は直ちには著作物といえませんが,デーモン閣下のメイクや服装については独自の創造性があるものと認められるならば,著作権侵害の問題になり得ます。

また,商標登録をしているのでなければ,商標権の侵害は問題にならず,「肖像権」が問題となります。

肖像権とは,有名人の氏名や肖像について認められる商業的な権利です。

例えば,アイドルの写真を無許可で撮影し,販売することは肖像権の侵害となり,損害賠償責任を負う可能性が高いといえます。

デーモン閣下の事例では,デーモン閣下のメイクや服装,また「デーモン〇〇」という呼び名は,著名であり,商品価値のあるものですから,肖像権が認められるといえるでしょう。

しかし,私は「ねこねこ日本史」の事例では,著作権や肖像権を侵害するとまではいえないと思います。

理由は,

①ねこねこ日本史の「デーモン風高杉」の絵は,相当デフォルメされた,いわゆる「ゆるい」絵柄であり,デーモン閣下に酷似しているとはいえず,また,多数の登場キャラクターの一人(一匹)にすぎないこと,

②デーモン閣下の肖像の特徴自体,古くから言い伝えられている悪魔や,典型的なパンクロックのメイク・服装のパロディ的な要素があること,

③高杉晋作が当時の文献に「悪魔のように傲然」と記されていることや,都々逸や短歌など歌が得意であったことから,歌手のデーモン閣下を連想したものであり,合理的な理由のある「うまい」パロディとしての価値が認められるものであること

からです。

 

5.注意点

最近,特にインターネットの世界では,色々な著作物,有名人のパロディ作品が溢れています。

しかし,「パロディだから許される」と安易に考えると,知的財産を侵害していると指摘を受ける可能性があります。

適法なパロディかどうかを判断することは,結局のところ,作品の内容,価値等に基づいて個別に判断していくほかなく,難しい法律問題の一つといえますので,商品やサービスの名称にパロディを用いることについては,注意が必要です。

弁護士とマーケティング


司法試験の合格者数が増加して,法曹人口が拡大していますが,その反面,国民人口の減少に伴って事件数が減っています。

弁護士間の競争が厳しくなっていると言われており,弁護士も日常的な営業活動が必要となっています。

競争も弁護士間の切磋琢磨を産むのであれば決して悪いことではありません。

また,きちんとアピールをすることで,顧客が必要とする情報を提供することはとても大切なことです。

私は,独立してから6年目になりますが,先日,弊所のアソシエイト弁護士に伝えたことをもとに,普段気を付けていることを,2回に分けて,ご紹介します。

1 マーケティングの重要性

弁護士は,実は仕事をこなすことよりも,仕事を得ることの方が難しいです。

ですから,仕事の能力と営業(経営)の能力は,同程度必要といえます。

優秀で人柄がよくても経営に苦労している弁護士もいる反面,逆に,営業過多で仕事が追いついていない弁護士もいます。

弁護士がマーケティングに気をつかい,営業に力を入れるのはもはやMUSTといえるでしょう。

出遅れる前に一歩でも先んじることが大切です。

なお,営業が上手いことと,本来明るい性格か社交的かということとは全く無関係と思います。

むしろ友人が少ない人の方がかえって時間が多くあり(同じ友達とばかり飲むのは内向き思考。親しい人こそ,たまに会うだけで十分),営業のためのプランニングや効果的な営業を実施することができるのではないでしょうか。

2 心構え

自分を売り込むことは決して恥ずかしいことではありおません。

弁護士の仕事は絶対に人の役に立つ,自分の名を広めることは社会貢献につながるという気持を強く持って良いと思います。

日常生活において知り合った人に対しても常に自分は弁護士であり,何かのときには役に立てる存在であることを意識してください。

そのためには,自分に自信を持つことが大切です。

特に税務事件,刑事事件については,弊所の弁護士は,同じ経験年数の弁護士と比較すれば経験数がダントツに多いはずです。

基本的な事件ばかりでなく,相当難しい事件もこなしています。

若い弁護士でも,早く一人前になる人は2~3年でそうなりますが,ならない人は10年経ってもなりません。

もちろん,常に新しい事件にぶつかったとき,基本的な文献や条文を確認するなどして,基礎的な勉強を怠らないことは前提で,「根拠のある自信」が大切です。

次に,具体的な活動方法を紹介します。

3 具体的な方法

(1)事務所報など

地道ですが,事務所報,年賀状,暑中見舞いを広く送ることが大切です。

学生時代の同級生,恩師,先輩,後輩,親戚,知人,名刺交換をした弁護士,士業その他知人,できるだけ広い範囲で。

相手やその知人に実は困っていることがあって,きっかけがないので連絡できないのかもしれません。

宗教の勧誘や投票の呼びかけのような場合と違って迷惑がられることは少ないので,気を遣いすぎる必要はないと思います。

「弁護士になったからって急に連絡してきやがって。」と思う人もいるかもしれませんが,そういう人とは元々人間関係が構築できないので,気にしないことです。

(2)交流会などの参加

交流会,セミナー,懇親会,地域の集まり等には積極的に参加し,名刺交換をします。

セミナー,懇親会等は無料や安価のものではなく,費用のかかるものの方が良いと思います。

無料,安価な交流会の中には宗教の誘いや,投資関係等の営業も多く,あまり実らないことが多いです。

ただし,そういう場に出ることの経験にはなるし,100人に1人くらいはすごく良い人に出会える場合もありますので全く無駄ということはありません。

なお,会話の中で,がんばって自分を売り込む必要はありません。

話の聞き役でよいでしょう。

まずは,話しやすそうな弁護士だ,と思われるだけで十分です。

ただ,得意分野(弊所ですと,刑事関係や税務)と,相手と共通するPOINT(出身地,大学,年齢など)だけは伝えておきたいです。

そして,「何でもやってます。」とあえて言う必要はありませんし,むしろ言うべきではありません。

得意分野を絞って説明しても,相手に印象を残して「感じが良さそうだ」,「良い事務所のようだ」などと思ってもらえたら,「専門外かもしれないけど,〇〇の相談にのってもらえます?」などという連絡がきます。

(3)同業者との関係

先輩や,同期,後輩の弁護士と仲良くしてください。

特に刑事弁護や税務,行政,反社対応はほとんど取り扱われないの弁護士が多いので,弁護士からの紹介も多いのが実情です。

(4)幹事を引受ける

同窓会,同期会の企画や幹事は,機会があれば積極的に引受けましょう。

雑用を引受けて,何度か顔を合わしているだけで,「気さくな弁護士だな。」などと気にいってもらえ,仕事につながることも多いです。

もちろん,自分自身,そういった人のお世話,お手伝いを楽しんでやることが大事です。

(5)執筆など

顔と名前が,世間に知られることは効果が大きいです。

特に執筆については,積極的に行います。

本を出版しているということは,大きな信頼を得られます。

一緒に本を書いてくれる人をのぞんでいる弁護士や士業の人も多いので,自分に執筆経験あること,出版に興味があること,協力を惜しまないことをアピールすると喜ばれます。

もちろん,内容が伴い,締切りを守ることが大前提です。

(6)人とのつながりを大切に

恩師や,修習のときにお世話になった指導教官などは,折りにふれて訪ねてご挨拶をします。

礼儀としても必要なことですが,喜んでいただけますし,人とのつながりを大切にすることが何事においても基本です。

また,普段出会う人で,営業の上手な人がきっといますので,その人の真似をしましょう。

弁護士に限らず,他士業,不動産屋,保険屋さんなどです。

私が開業をしたのはちょうど厄年に近い年齢だったのですが,ある不動産屋さんから,「開業のようなめでたいことをすれば,厄はふっとぶんですよ。」と言われ,上手いことをおっしゃるなあと感心したことがあります。

弁護士会の検索サイトや,その他無料サイトへの登録,有料サイトへの登録も行いますが,インターネット広告は既にレッド・オーシャンで,広告費を多く使わない限り,効果は乏しいでしょう。

交際費については,たとえば大学の先輩におごってもらうというような特殊な事情がない限り,きちんと応分の負担をしましょう。

もしご馳走になったら,翌日必ずお礼の電話か,少なくともメールでお礼を言います。

当たり前のことではあるのですが,金払いに汚い,礼儀知らずという印象は,人間性の評価につながります。

また,知り合った会社の方と食事などをしたり,相談を受けている中で,事業内容や悩んでいることをお聞きしてみると,継続的にかかわらせていただいた方がお役に立てるのではないかと思うときがあります。

その場合,顧問契約を提案するのに遠慮はいりません。相手の方が遠慮されている場合もありますので。

「もし,お役に立てるのであれば」という意識が大切ですので,過剰な売り込みになってはいけないという自戒は大切です。

また,弁護士の仕事は紹介が命なので,士業(税理士,社労士,司法書士,行政書士,弁理士など),保険屋さん,不動産屋さん,議員秘書など顔が広く,また人からよく相談を受けやすい人とのつながりを大切にします。

普段あまり会わない,名刺交換をしただけの人であっても,事務所報を贈り続けるなど関係を維持することで,不意にお役に立てることがあります。

経済同友会,商工会議所,JC,ロータリー,ライオンズクラブ等に入ることは伝統的な方法です。

ただ,すぐ仕事につながるものではなく,楽しんで,休まず参加するのでなければ,お金と時間がもったいないです。

私はロータリーに入っていますが,人生の先輩を含め色々な経営者の方と知り合うことができ,何よりも勉強になって楽しい,と感じています。

(7)普段から種をまく

何にせよ,企画すること,こころみることが大事です。

マーケティングのアイデア(セミナー,著作など)を常に考えて溜めておくことが大切です。

私が担当し,画期的な最高裁判決をもらうことのできた馬券の払戻金についての所得税法違反事件は,たまたまホームページに載せていた短いコラムを依頼者に見つけてもらったことがきっかけです。

どんな小さな種であってもまかないと芽吹かないものだと思っています。

 

 

 

タックス・ヘイブン税制について


税務判例入門最近,企業の海外進出が目覚ましく,国際課税の問題は避けて通れません。

国際課税についての重要な問題として,平成29年10月,タックス・ヘイブン税制に関し,注目すべき最高裁判例が出されました(いわゆる「デンソー事件」)。

そこで,今回は,タックス・ヘイブン税制と「デンソー事件」について解説します。

 

1.タックス・ヘイブン税制

タックス・ヘイブンとは,税負担が著しく低いまたは税が存在しない国や地域のことを指します(租税回避地の意味で,タックスヘブン=税金天国ではありません)。

タックス・ヘイブンに子会社を設立し,その子会社に所得を移転することによって,グループ全体の税負担を軽減する租税回避が可能です。

そこで,わが国では,このような租税回避を防止するために,タックス・ヘイブンに設立され,一定の要件を満たす外国子会社の所得を,その株主である日本の親会社の所得に合算して課税する制度(タックス・ヘイブン税制)がとられています。

 

2.タックス・ヘイブン税制の適用除外

ただし,子会社を設立することで正常な経済活動を行っている企業に対まで,一律にその子会社の所得を合算して課税を行うと,企業の正常な海外展開による経済活動を阻害します。

そこで,タックス・ヘイブン税制は,次のような「適用除外基準」をもうけています。

これは,外国子会社について,単なる課税逃れ目的ではない,実体を有する必要があるというものです。

①事業基準

外国子会社の主たる事業が,株式の保有等,一定の事業でないこと

②実体基準

外国子会社が,事業を行うのに必要な事務所,店舗,工場などの固有的施設を有すること

③管理支配基準

外国子会社が,その所在地国において事業の管理,支配及び運営を自ら行っていること

④非関連者基準

外国子会社が,卸売業,銀行業,信託業,金融商品取引業,保険業,水運業または航空運送業を営む場合には,その主たる取引の50%超を関連者以外のものと行っていること

⑤所在地国基準

外国子会社が④に定める業種以外の業種に従事しているときは,その事業を主としてその本店所在地国内で行っていること

以上の基準をすべて満たした場合(ただし,④と⑤はいずれか)に,タックス・ヘイブン税制の適用が除外となります。

 

3.デンソー事件最高裁判決

デンソー事件では,適用除外要件のうち,主として,①の事業基準が問題となりました。

事案は,大手自動車部品メーカーの株式会社デンソーが,シンガポールに有していた子会社の所得について,タックス・ヘイブン税制が適用され,デンソーの所得に合算して課税されたというものです。

本件子会社は,ASEAN地域内での集中生産・相互補完体制の円滑化を図るため,地域業務の統括を目的として,ASEAN地域にある子会社及び関連会社の株式を保有していました。

そこで,税務署長は,本件子会社の主たる事業が「株式の保有」であるとして,①の事業基準を満たさないとしたのです。

しかし,最高裁は,以下のように判断し,デンソーを勝訴させました。

「本件子会社は,グループ各社の企画,調達,財務,材料技術,人事,情報システム,物流改善という多岐にわたる地域統括業務を行い,配当以外にも,これら業務の対価としての売上げを多くあげていたことから,主たる業務は「地域統括業務」であり,事業基準を満たす」

 

4.今後の注意点

近年のグローバル経済化の下では,中小企業も海外子会社を設立する場合が多くあると思われます。

その場合に,課税逃れと見られないためには,海外子会社に事業の実体があることが必要であり,業務の内容,施設,人員等の確保が重要です。

最高裁判決でも,実際に地域統括業務を行ってその対価を得ているという実質が重視されています。

なお,平成29年度にタックス・ヘイブン税制の一部改正がなされました。

特に重要な点としては,海外子会社が適用除外基準(改正後は,「経済活動基準」と呼称)を満たすことを明らかにする書類等の提示又は提出がない場合には,その基準を満たさないと推定する旨の規定が創設されたことです。

これは,立証責任を納税者に転換したもので,税務調査が行われた場合には,積極的な資料の提供や説明が必要となりため,注意が必要です。

外国公務員への贈賄罪


先月,タイの発電所建設を巡る外国公務員に対する贈賄事件について,今年6月から導入された「司法取引」が摘要され,日本の法人が不起訴処分になったとの報道がありました。

外国公務員に対する贈賄は,日本の不正競争防止法に違反し,罪に問われます。

この罪は,外国の公務員に対して,営業上の不正な利益を得るために金品を供与する行為を処罰するものです。

その刑は,5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金,また,会社にも3億円以下の罰金が科されるという非常に重いものです。

アジアで業務展開するには袖の下を送るのは必要悪だという感覚が以前はあったかもしれません。

しかし,現在ではこのように日本国内での犯罪になってしまうので,十分な注意が必要です。

平成21年にも,ベトナムのハイウェイ建設計画のコンサルタント業務受注に対する謝礼として82万ドルを供与したという事案がありました。

同事案では,元役員に執行猶予付きの懲役刑が科され法人が7000万円の罰金に処せられました。

日本における外国公務員に対する贈賄罪の摘発例はあまり多くありませんが,OECDからは,もっと積極的に摘発するように改善を求められているところです。

談合やカルテルも,以前は,日本での摘発は活発ではありませんでした。

しかし,外国からの強い圧力によって,厳罰化,摘発の積極化の方向に進んでいます。

外国公務員に対する贈賄罪も,急に活発に摘発がなされる可能性は否定できません。

したがって,海外の工場,営業所,あるいは海外での営業を担当する従業員に対しては,絶対にこのようなことのないよう周知徹底が必要といえるでしょう。

 

 

固定資産税について課税処分の無効を認めた事例


1 課税処分が税務判例入門無効に!

 固定資産税の課税処分に重大な違法があるとして無効となり,納税者が全面勝訴した事例があります(大阪地裁平成24年2月10日判決・ウエストロージャパン掲載)。

 この事件は筆者(中村)が原告代理人を担当しましたが,行政処分が無効であると認めた裁判例は大変貴重です。

 拙著の「税務判例入門」でも取り上げましたが,このブログでも簡単にご紹介します。

 

2 事案の概要

  不動産業を営むX社が,大阪市内の土地について都市計画法に基づく開発許可を大阪市から受けました。

 その際,大阪市は許可を与える条件として,土地の一部を公園と緑地とし,公園と緑地には住宅を建設することを禁止しました。

 その後,X社は開発行為を行い,101戸の分譲住宅が完成しました。

 X社が所有する公園及び緑地(合計約400平米)について,X社から大阪市に寄付の申出をしましたが,それは拒否されました。

 他方で,大阪市は,総務大臣の定める固定資産税評価基準と,大阪市の定める固定資産評価実施要領に基づいて,この公園と緑地について,雑種地として近隣の宅地と同様の評価(坪単価30万円~40万円程度)をしました。

 その結果,土地の評価額は合計約4800万円もの高額な評価となり,年額約55万円の固定資産税及び都市計画税が課されたものです。

 これに対して,X社は,大阪市を被告として,固定資産税等の租税債務の不存在の確認を求める訴訟を提起しました。

 

3 判決の概要(納税者勝訴)  

 本件各土地には建築物を建築できず,公園及び緑地として利用しなければならない制限が存在する。

 その上,本件各土地を公園及び緑地として維持管理する費用の負担等も考慮すると,近傍の宅地と同等の条件で本件各土地の取引が成立するとは考えられない

 したがって,本件各土地については,取引価格が存在しないか,取引価格を想定するとしても極めて低廉なものにとどまるというべきである。 

 よって,本件各土地の登録価格の決定には重大かつ明白な瑕疵があって無効であるから,同決定に基づいてされた本件各賦課処分も無効である。  

 

4 解説

  固定資産税は,土地や建物といった固定資産の価格に一定の割合で税が課されます。

 そして,この価格とは,「適性な時価」をいいます(地方税法341条5号)。

 この「適正な時価」は,総務大臣が告示した固定資産税評価基準によって,市町村長が決定します(地方税法388条1項,403条1項)。  

 ただし,評価額が実際の土地の時価を上回るときには,固定資産税の価格の決定は違法となるというのが判例です(最高裁平成15年6月26日)。

 本判例で特に注目すべき点は,課税処分の無効を認めたという点です。

 固定資産税については,評価基準だけでなく,各自治体で実施要領等が定められている場合もありますが,本件の公園又は緑地のように必ずしも具体的な評価方法が定められていないこともあります。

 その場合,各自治体は基準がないことを理由に,個別に補正はせずに,現行の基準を無理に当てはめることがあるので,注意が必要です。

 本件については,結局,大阪市は控訴せず,平成24年4月1日に固定資産税の評価方法を改めて,都市計画法の開発行為に伴い設置される公園,緑地については,付近の土地の価額の10分の1に相当する価額とするとして,実施要領を変更しました。

日本版「司法取引」について


企業と従業員の犯罪_書籍カバー1 日本版「司法取引」の導入

 今日6月1日から,司法取引制度が施行されました。

 これは,平成28年度の刑事訴訟法改正で,「証拠収集等 への協力及び訴追に関する合意」という章によって追加されたものです。

 この制度については,「事例に学ぶ企業と従業員の犯罪 予防・対応チェックポイント」でもコラムで解説しましたが,このブログでも簡単に紹介します。

 アメリカ合衆国では「司法取引」の制度が確立されており,広く利用されています。

 日本では,古くは昭和51年に,「ロッキード事件」で,似たようなことがありました。

 これは,田中角栄元総理に対する贈収賄に関連し,その鍵を握るロッキード社のカール・コーチャン副社長の証言について,検事総長が将来にわたり起訴しないことを宣明し,最高裁判所もその宣明を保証する趣旨の宣明を行なったというものです。

 これは司法取引の一種の「刑事免責」に当たります。

 しかし,最高裁判所は,コーチャン副社長の嘱託尋問調書について,我が国の刑事訴訟法は刑事免責の制度を採用していないとして,証拠採用を認めませんでした(最判平成7・2・22)。

 今回の司法取引の制度は,取調べの可視化を拡大する一方で,取調べを通じた供述の確保を図るため,新たに導入されたものです。

2 司法取引の対象

 

  まず,司法取引の対象となる犯罪は,一定の犯罪に限られており,これを「特定犯罪」といいます。具体的には,以下のとおりです。

  ①競売妨害(刑法96条~96条の6)

  ②文書偽造等(刑法155条,155条の例により処断すべき罪,157条,158条,159条~163条の5)

  ③贈収賄(刑法197条から197条の4,198条)

  ④詐欺・恐喝(刑法246条~250条,252条~254条)

  ⑤組織的競売妨害等,組織的詐欺・恐喝(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律〔以下「組織的犯罪処罰法という。」〕3条1項1号~4号,13,14号,4条(3条1項13号及び14号に係る部分に限る)

  ⑥マネーロンダリング(組織的犯罪処罰法10条,11条)

  ⑦財政経済関係犯罪(租税法,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律,金融商品取引法,その他財政経済関係犯罪として政令で定めるもの)

  ⑧薬物・武器関係犯罪(爆発物取締罰則,大麻取締法,覚せい剤取締法,麻薬及び向精神薬取締法,武器等製造法,あへん法,銃砲刀剣類所持等取締法,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律違反)

  ⑨特定犯罪についての証拠隠滅等(刑法103条,104じょう,105条の2,組織的犯罪処罰法7条1項1号空3号に掲げる者に係る同条の罪〔いずれも,前記各号に掲げる罪を本犯の罪とするものに限る〕)

 

3 司法取引の内容

 司法取引をしようとする場合に,「他人の刑事事件」について,以下の行為を被疑者又は被告人の方で行ないます。

  ①検察官,検察事務官又は司法警察職員の取調べに対して真実の供述をすること

 ②証人として尋問を受ける場合において真実の供述をすること

 ③検察官,検察事務官又は司法警察職員による証拠の収集二関し,証拠の提出その他の必要な協力をすること

 これに対して,検察官が行なう行為は,以下のとおりです。

 ①公訴を提起しないこと

 ②公訴を取り消すこと

 ③特定の訴因及び罰条により公訴を提起し,又はこれを維持すること

 ④特定の訴因若しくは罰条の追加若しくは撤回又は特定の訴因若しくは罰条への変更を請求すること  

 ⑤刑事訴訟法293条1項の規定による意見の陳述(論告求刑)において,被告人に特定の刑を科すべき旨の意見を陳述すること    

 ⑥即決裁判手続の申立てをすること

 ⑦略式命令の請求をすること

 要するに,司法取引の内容は,他人の特定犯罪についての情報を提供する見返りに,自らを不起訴にしてもらったり,刑を軽くしてもらうというものです。

 この司法取引を行なうためには,必ず弁護人の同意が必要です。

 また,検察官と,被疑者又は被告人,弁護人が連署した合意書面を作成する必要があります。

 具体例としては,会社の経理担当者が贈賄に関与している場合に,代表者の関与を積極的に供述する代わりに,自らを不起訴にしてもらうという場合が考えられます。

 

3 日本版司法取引が実務に与える影響

  企業内で不正が発覚した場合,たとえば,公務員に対して贈賄が行なわれたというようなケースが内部調査で発覚したとしましょう。

 その場合,まだ捜査機関がそのことを知らないのであれば,その事実を捜査機関に供述する代わりに,贈賄側の担当者を不起訴,あるいは略式裁判にしてもらうよう検察官に持ちかけることができます。

 ただ,司法取引を持ちかけても,事件の重大性や情状等の事情により,検察官が必ず応じるとは限りません。

 しかし,贈収賄など重大犯罪については,司法取引が成立する可能性は高いでしょう。

 ですから,企業内部で不祥事が発覚した場合には,司法取引の利用の要否を判断する必要があります。

 内部調査を迅速に行なうことの重要性はこれまで以上に高まるといえるでしょう。

横目調査について


 税務判例入門税務調査では,納税者が金融機関に解説している口座の内容を調べることがよく行われます。これを銀行調査とか金融機関調査といいます。

   その中で,実務上,「横目調査」と呼ばれる違法な調査が行われている実態があると指摘されています(大村大次郎「バレると後ろに手が回る脱税のすすめ」彩図社・203頁)。

税務調査が違法と認められた判例については,「プロフェッショナルを目指す人の税務判例入門」でも紹介しましたが,横目調査については詳しく解説できませんでしたので,このブログで紹介します。

 横目調査とは,別件の税務調査に名を借りて,それとは無関係の第三者の口座を調査することです。

 税務調査においては,調査の必要性が認められることが要件とされており(国税通則法74条の2等),必要がないのに,一般的網羅的に銀行口座の内容を覗き見ることは,違法です。

 この点は,最高裁の判例でも明らかにされています(最高裁昭和48年7月10日第三小法廷決定・刑集27巻7号1205頁,志場喜徳郎他編「平成25年改訂国税通則法精解」大蔵財務協会・835頁参照)。

 さらに,銀行調査の場合には,他人名義のものについては原則として調査の対象になり得ず,他人名義であっても本人のものであることが客観的に明らかな場合に調査の対象となし得るという有力な見解もあります(北野弘久「税法学原論・第7版」勁草書房・315頁)。

 そうすると,銀行口座の内容という個人の経済活動や生計に関わる重大な情報について,当該口座について調査の必要性がないのに,必要性があるかのように金融機関を欺き,かつ当該名義人の同意もないまま国家機関が覗き見ることは,個人のプライバシーを大きく侵害するものです(X線検査を違法とした最高裁平成21年9月28日第三小法廷決定・刑集63巻7号868頁,GPS捜査を違法とした最高裁平成29年3月15日大法廷判決・裁判所web参照)。

 国税当局は,仮名預金や借名預金の可能性があるので,対象者の名義以外の口座も調査する必要があると判断しているようです。

 なお,現在の厳格な本人確認の制度の下では仮名預金は困難で,実際には借名預金が問題となります。

 しかし,借名預金の可能性があるから,広くどの口座でも見ることができるというものではありません。

 家族や従業員など借名が疑われる場合にはその氏名を特定して,調査する必要があります。

 私見では,対象者以外の名義の口座に対する調査が例外的に許され,適法と認められるためには,①具体的な事実関係に照らして,当該口座が真実は対象者の口座であり,仮名預金,借名預金であると疑うに足りる客観的な根拠が存在する必要があり,②金融機関に対する照会内容も,その必要性に応じて例えば第三者の名義を特定するなど調査対象を具体的かつ明確に特定したものでなければならないと考えます。

 しかし,実務上は,そのような原則は守られず,銀行口座の内容が調査官によって自由に覗き見られているようです。

 私の担当している裁判でも,横目調査が疑われたことから,調査担当者を証人尋問しましたが,担当者は,なんと守秘義務を理由に証言を拒否しました。

 しかし,そのようなことが許されては,国民の権利侵害を防止することはできません。

 国税当局はベールに包まれた金融機関調査のあり方を透明化し,違法な調査が行われないように徹底し,また,調査手法が疑われた場合には,事後的にであっても国民にきちんとその内容を説明する責任があると考えます。

 

パワハラ,セクハラについて


 企業と従業員の犯罪_書籍カバー最近,財務省の事務次官が女性記者に対するセクハラ疑惑で辞職をしたことが大きな話題になっています。

 これまで普通だと思って行われていたことが,セクハラ,パワハラとなってしまい,違法性が問題となることが多くあります。

    時には,強制わいせつ,暴行,脅迫といった犯罪になりかねない場合もありますが,そのあたりについては,「事例に学ぶ企業と従業員の犯罪 予防・対応チェックポイント」でも紹介されています。

 ブログでは,そこまでに至らない場合でも,パワハラ,セクハラとなる場合やその対応について簡単に解説します。

 パワハラとは,一般に,職場における地位を利用したいじめ・嫌がらせ行為を指します。

 これは,上司から部下へのいじめだけでなく,先輩・後輩間,部下から上司へのいじめも含まれます。

 具体的な例としては,

① 暴行・脅迫などの身体的な攻撃,

② 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的攻撃,

③ 仲間はずれや無視など人間関係を分断する行為,

④ 不可能な要求や仕事の妨害(過大要求),

⑤ 過度に程度の低い仕事を命じたり仕事を与えない(過小要求),

⑥ 私的な内容への過度の立入り(個への侵害)

が挙げられます。

 また,セクハラとは,一般的には,相手方の意に反する性的な言動と定義され,「対価型」と「環境型」に分類されます。

 「対価型」とは,例えば,上司が部下に対してしつこく夕食に誘ったりメールを送ったりして,それを拒否されたことの腹いせに不利益な配置転換をするというような場合を指します。

 「環境型」とは,例えば,職場内で部下の体に触ったり,性的な言動を繰り返すことで,従業員の意欲を低下させるような場合を指します。

 セクハラ,パワハラは,民事上の不法行為となり得ますので,行為者だけでなく,経営者にも使用者責任としての損害賠償責任が発生します。

 ですから,会社の経営者としては,パワハラ,セクハラが発生しないように必要な措置を講じて,職場環境を整える必要があります。

 具体的には,

① 組織のトップが,パワハラ,セクハラは職場からなくすべきである  ことを明確に示す,

② 就業規則に関係規定を設ける,労使協定を締結する,指針,ガイドラインを作成する,

③ 実態把握のために従業員アンケートを実施する,

④ 相談窓口を設置する,

⑤ 通常研修,再発防止研修を行う

 といったことが考えられます。

 また,実際にパワハラ,セクハラが発生した場合には,その内容に応じて,行為者に対しては,戒告,減給などの懲戒権の行使も検討されなければならず,悪質な場合には,懲戒解雇の対象ともなります。

 行為者としては,パワハラ,セクハラの自覚がなく,単なる教育やコミュニケ-ションだと思っている場合もありますので,適切な経営を行うためには,まずは経営者が正しい知識をもち,その上で,従業員に対して,しっかりとした対策,教育をほどこすべきでしょう。