顧客サービスと弁護士
- 2014年01月16日
- 経営
昨日,東京ディズニー・ランドに勤務していたことのある加賀屋克美さんの講演を聴きました。
「お客様を本当に思いやることは,どういうことか?」という観点から,さまざまな実例をもとにわかりやすく解説されました。
たとえば,
・サービスの内容をあえてマニュアルで詳細に決めずに,「お客様がもし,自分の一番大切な身内だったら,どうするか。」という観点で各自が工夫していること
・案内板を置かないことで,スタッフが声をかけやすくしている(ディズニーランドでは,スタッフのことを,キャスト〔役者〕と呼んでいるそうです。)
・風船をほしがっている子どもがいても,飛行機に乗って帰るということであれば,持ち込みができないことを教えて,あえて売らずに,その変わりにたくさんの風船を持たせて記念写真を撮ってあげるなど,マニュアル的な処理を行うのではなく,その場でサービスの内容について適切な判断をする
ということなど,大変参考になりました。
私の体験でも,次のようなことがありました。
子どもがまだ生後5か月くらいのときに,東京ディズニーランドを訪れました。
観光シーズンでしたので,非常に混雑していましたが,子どものはいていた,本当に小さな小さな靴下を1足落としてしまいました。あちこち歩いたので,どこで落としたのかもわかりません。
さすがにこれは出てこないだろうと半分あきらめましたが,お気に入りの靴下でしたので,念のためインフォメーションで問い合わせたところ,何と掃除のスタッフの方が拾って届けてくれていたとのことで,しかも,簡単な特徴を言っただけなのに,すぐにその靴下を出してくれました。
私も妻も大喜びでしたが,インフォメーションの窓口の方も,自分のことのように一緒に喜んでくれました。
靴下をなくしただけなら,残念な思い出になるところでしたが,スタッフの方のすばらしい対応のおかげで,逆に忘れられない良い思い出になったということがありました。
ディズニー・ランドを訪れる人は,そこに行くことを楽しみにして,わくわくしながら期待を高めています。期待以上のサービスが受けられることで幸せになって,また訪れようと思うことで,リピーターがたくさん増えているそうです。
これに対して,法律事務所の場合は,トラブルにまきこまれてしまったなどの事情から,やむを得ず弁護士を訪れているというのが大半だと思われます。
その点,ディズニー・ランドとは全く違います。
しかし,人を幸せにするという点には,2つ意味があると思います。
一つは,楽しいことや,嬉しいことを与えること。
もう一つは,しんどいことや,辛いことをなくしたり,軽減すること。
弁護士は,2つ目の意味においては,訪れた方に幸せを与える職業であることに変わりがないと思っています。
弁護士の職責としては,法律の正しい解釈をアドバイスしたり,書面を作成したり,手続をサポートするということですが,これは,飲食店が食事を提供したり,物を売るお店が商品を提供したりするのと同様,最低限のサービスです。
それにとどまらないように,依頼者の目線に立ったサービスが必要と感じています。
例えば,
・難しいことでも,できるだけかみ砕いて,わかりやすい説明をすること
・直接聞かれていないことであっても,時には,相談している方の立場を考えて,ほかに想定される事態について踏み込んだアドバイスを行うこと
・弁護士も,スタッフも,トラブルに巻き込まれている方の心情に配慮して,報告をこまめに行うとともに,丁寧な言葉遣いを心がける
・依頼をしようとされている内容についても,それが最善ではないと判断される場合には,あえて違う方策をアドバイスすること
などです。
簡単なようですが,これらを完璧に行おうとすると難しいところもあります。
しかし,まず私自身が,常にその心がけを忘れず,率先して行いたいと考えています。