PAGE TOP ▲

アメリカにおける馬券に対する課税について


121102馬券の払戻金に対して過大な課税がされた裁判の件は,現在,高等裁判所の刑事裁判でも,地方裁判所の税務訴訟でも,互いの書面の提出が続いている段階で,まだ,結審の見通しは立っていません。

さて,今回の裁判をきっかけに,競馬の払戻金について諸外国の法制度がどうなっているのかを調べてみました。

アメリカ合衆国については,きちんと制度が整っており,以下のような課税になっているようです。

まず,アメリカでは内国歳入法という法律で,所得税が定められています。

そして,競馬などギャンブルで得た利益(gambling winnings)については,「その他の所得(other income)」として,所得に算入されることになっています。これは,カジノで得られた利益のほか,宝くじ,競馬の払戻金などが含まれます。

この場合,その年度に被ったギャンブルの損失額(gambling losses)は,その年度のギャンブルで得た利益を限度に損失として控除することができます(伊藤公哉「アメリカ連邦税法・第4版」86頁,298頁参照)。

要するに,外れ馬券の購入費も,払戻金の額を超えるまでは,すべて経費として認められているのです。

また,アメリカの判例によれば,賭博で生計を立てていることを立証した場合,賭博の損失は事業経費として控除できるとされています(同書101頁)。

このようなアメリカの取扱いは,実態に即した合理的なもので,日本でも本来このように考えられるべきでしょう。

日本の所得税法は,第二次大戦後の昭和25年,アメリカ合衆国より派遣されたシャウプ博士によるシャウプ勧告によって形成されたものです。そして,アメリカ内国歳入法にいう「その他の所得」とは,いわば我が国の「雑所得」ないしは「一時所得」に類するものです。

そうすると国税当局が主張しているところの,外れ馬券は必要経費とならないという見解は,このような比較法や,所得税法の沿革的な見地からも,疑問といえるのではないでしょうか。

 

さて,12月22日(日)は,いよいよ有馬記念です。凱旋門賞で惜しくも2着であったオルフェーブルが,有終の美を飾ることができるか,注目ですね。なお,画像は,JRAのホームページから引用させていただきました。

過大な税金が課せられるような取扱いが一日も早く改められ,競馬ファンが安心して競馬を楽しめるようになることを,心から望んでいます。