クラシック音楽と法律家②
- 2013年11月8日
- その他法律
前回の記事に続いて,今度は,法律家が聞くにふさわしいクラシック音楽や音楽家という話に進みます。引き続き,軽い気持ちで読んで下さい。
なお引用画像は,ドイツの名指揮者のギュンター・ヴァントの日本公演でのDVDです。カラヤンのような派手さはありませんが,ブルックナーやベートーヴェンの交響曲を得意とする正に頑固一徹の職人といった指揮者でした。
1 法律家にお勧めのクラシック音楽
(1) 裁判官
これはもう,バッハとモーツァルトです。私の知っている裁判官は,皆さん上品で折り目正しい方ばかりだからです。
そして,裁判官の仕事には,他人に相談できず,自分だけで結論を決めなければいけないという孤独がつきものです。
モーツァルトの曲は,ご存じのように明るくて親しみやすいものですが,その底には悲しみや孤独が感じられ,正に裁判官の心理を反映するにふさわしいと言えましょう。
具体的な曲名を挙げると,バッハでは「無伴奏チェロ組曲」,モーツァルトでは「交響曲第40番」あたりがピッタリではないでしょうか。
(2)検察官
検察官には,本当は「兄弟船」などのベタな演歌が似合います。しかし,あえてクラシックでいうなら,ベートーヴェンとワーグナーでしょう。犯罪という社会悪と闘うには,強いモチベーションと粘りが大事なため,重厚で元気が出る曲が一番です。
ベートーヴェン「交響曲第5番運命」と,ワーグナー「ニュルンベルグのマイスタージンガー前奏曲」を聞いて,気合いを入れたいところです。
(3)訟務検事
行政の円滑な運営を守るという役割を担いながらも,その一方で,あえて行政に苦言を呈することもあり,微妙な立場です。
そこで,挙げたい作曲家は,ドイツ・ロマン派のブルックナーとマーラーです。突然曲調が変わるなど矛盾を内包したところや,曲がやたらと長いことが,訟務検事の立場や,国の準備書面が長いところに通じます。
具体的には,ブルックナーの曲で一,二を争う美しさの「交響曲第7番」と代表作「交響曲第8番」,それから映画「ヴェニスに死す」でも使われたアダージェットで有名なマーラー「交響曲第5番」。どれも大変良い曲なので,ぜひ聴いて頂きたいです(ちなみに,私が一番好きな作曲家はブルックナーです)。
(4) 弁護士
やはりオーケストラは似合わないように思うので,ピアノ曲などはいかがでしょうか。
法廷で激しく反対尋問をしているときにはショパンの「革命」,誰からも親しみやすい(弁護士の理想ですね)という意味でチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」などを聴いて頂きたいところです。
私は仕事で疲れ切ったときなどは,良くチャイコフスキーの音楽を聴きます。甘い砂糖菓子のようなイメージで疲れがとれるような気がするからです。
2 尊敬する音楽家と目指す法律家像
私が尊敬する音楽家の話をします。
まずは1人目ですが,私は過去3回「1万人の第九」というイベントで,ベートーヴェンの交響曲第9番の合唱に参加しました。そのときの指揮者が,佐渡裕(ゆたか)さんでした。
佐渡さんは,パリ・コンセール・ラムルー管弦楽団の首席指揮者であり,兵庫県の芸術監督にも就任されている方ですが,その指揮する姿は,それはそれは情熱的です。「1万人の第九」においても,素人の集まりである我々合唱団に熱心にリハーサルをして下さるのですが,音楽のことを分かりやすく,かつ情熱的に語るその姿に,合唱団全員が感化されて,どんどん一体となります。そしてリハーサルが進むにつれて,歌がびっくりするほど良くなっていく様子に,心から感激しました。
次に,日本人指揮者として一番有名な小澤征爾さんを挙げますが,その音楽は流麗そのもので,まばゆいばかりの美しさがあります。
ウィーン国立歌劇場の音楽監督という,クラシック音楽界のトップの地位に就いたこともありながら,その人柄はとても気さくで謙虚な方のようです(一度,テレビでアイドルグループの「ZONE」にまで,丁寧にお辞儀をして愛想を振りまいていた姿を見て,驚いたことがあります)。
そして,私が最も尊敬している音楽家は,2001年に亡くなられた指揮者の朝比奈隆さんです。
その1年前にザ・シンフォニーホールで聞いた大阪フィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェン「交響曲第3番英雄」は,まるで作曲者の霊が降りてきたかのような名演奏で,余りの感動に心が震えました。
「1回でも多く舞台に立つ」が彼のモットーで,93歳(!!)で亡くなられるまで本当の意味で現役の指揮者として活躍され,ベートーヴェンやブルックナーの音楽において素晴らしい演奏を残されました。
このような一流の音楽家と比べて,私自身の普段の仕事に対する姿勢をかえるみると,身が引き締まります。打合せの席で,佐渡さんのように誰にでも分かりやすい話し方をしているだろうか,小澤さんのように謙虚な態度を取っているだろうか,仕事に対して,朝比奈さんのように愚直に情熱を燃やしているだろうか……。
これからは,少しでも良い演奏(仕事)をして,聴衆を感動させるために(社会正義の実現),尊敬する音楽家の素晴らしいところを真似していきたいと,心から思っています。