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理不尽な要求への対処法


64_1暴力団など反社会的勢力や,悪質なクレーマー,粗暴な人(関西弁でいうところの「ヤカラ」)から,理不尽な不当要求を受ける被害に遭っている人は,決して少なくありません。

そのような場合に,自分だけで対応しようとすると,大変なストレスを抱え込みますし,時には暴力を振るわれるなど身に危険が生ずることあります。こういうときは,専門家の助力が不可欠です。

実際には,そのような相手方は,依頼者のことを「弱い人」だ,「脅せば言うことを聞く。たいしたことない。」と思っているから,何度も電話してきたり,色々脅しを言ってきたりするわけです。ですから,そのような手段が全く通じないということが分かれば,一切,連絡してこなくなります。

私の経験上,弁護士が代理人として相手方に対して,不当な要求について抗議し,要求を拒絶することを明示し,やまないようであれば警察へ告訴などの法的手段も講ずる可能性があることを内容証明郵便によって通知すれば,それだけで,ぴたっと要求がやむという事例がたくさんあります。依頼者にとっては,「えっ,こんなにあっさりと?」と意外に思われる方も多いです。

特に暴力団関係者などは,不当な要求行為をビジネス,つまり金儲けの手段として行っているにすぎないので,弁護士が代理人に就任したり,裁判などの法的な手続を取られた時点で,そのビジネスは終了するばかりか,逮捕などのリスクを考えて,おとなしくなるのです。「弁護士をつけたり,警察に言ったりしたら,復讐されるのではないか。」との心配は,杞憂にすぎません。

しかしながら,稀に,弁護士から警告をしても,不当要求がやまない事案もあります。これは,親戚同士や男女関係のもつれなど,個人的な恨みが強い場合や,相手方に犯罪者的な傾向が特にに強い場合に見受けられます。

そのような場合には,警察に被害の申告をし,保護を要請するほか,裁判所に面談強要禁止の仮処分を申立てることができます。

裁判所から出される命令は,例としては,以下のとおりです。なお,債務者が不当要求をしている人で,債権者が被害を受けている人です。

1 債務者は,債権者に対し,債権者の自宅又は勤務先を訪問し,電話をかけ,ファクシミリを送信し,メールを送信し,又は手紙を出すなどの方法により,債権者と直接面談を強要してはならない。

2 債務者は,債権者に対し,債権者の自宅・勤務先及びその近隣を徘徊し,債権者の身辺につきまとったり,待ち伏せしたりしてはならない。

このような処分は,ある程度の証拠があれば,裁判所が迅速に出してくれます。

相手方からのFAX,手紙などの文書,電話の録音,こっちに来たときの様子を録画した映像などが証拠になりますので,これらを集めておく必要があります。また,このような場合,相手方の承諾なく録音をすることは決して違法ではありません。

不当要求の実態を目の当たりにしている現場の弁護士としては,このような被害を防止し,また少なくすることで,安心して暮らせる社会になることを切実に望んでいます。

なお,引用画像は,全国的に活躍している民暴弁護士による論文集です。私と一緒に今年度の大阪弁護士会民暴委員会の副委員長を務めている同期の田中一郎弁護士も寄稿しています。好著ですので,ご紹介しておきます。