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パワハラ防止法について


弁護士の荒木誠です。

今回は,先日新たに成立したパワーハラスメント防止法(以下「パワハラ防止法」といいます。)について解説します。

この法律で,パワハラの防止について初めて規定されたことになりますので,企業としてはその内容を理解しておくことは極めて重要です。

 

1.パワハラ防止法とは

パワハラ防止法は,今年の5月に成立したばかりの法律です。

とはいえ,パワハラ防止法という名前の法律ができたわけではなく,正確には「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(いわゆる労働施策総合推進法)に,パワハラに関する規定が追加されています。

 

そして,パワハラとはどのような行為を指すかについては,職場において行われる優越的な関係を背景とした,業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,就業環境を害すること,と定義されました。

パワハラの典型例には,これまで厚労省は,①暴行・傷害(身体的な攻撃),②脅迫・名誉毀損等(精神的な攻撃),③隔離・無視等(人間関係からの切り離し),④業務上明らかに遂行不可能なこと等の強制(過大な要求),⑤業務上の合理性なく程度の低い仕事を命じること(過小な要求),⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)を挙げていました。これは改正後においても,参考になります。

 

2.パワハラ防止法の具体的内容

パワハラ防止法は,企業に対して,パワハラ防止策をとることを義務付けました。

具体的には,労働者からの相談に対応するための体制の整備をしなければなりません。体制の整備については,就業規則の整備,通報窓口の設置などの対応が考えられますが,今後,規則やガイドラインの制定により,具体化される見込みです。

また,企業に対して,パワハラに関する研修の実施をすることの努力義務も規定されています。

そして,法律の定めに反した場合には,罰則規定はありませんが,行政側からの指導・勧告を受ける可能性がありますし,勧告に従わなかった場合には企業名の公表がされる可能性があります。

 

3.最後に

報道によれば,パワハラ防止法の施行は大企業については2020年4月から,中小企業については2022年4月からの見通しのようです。

今後,規則やガイドラインも出され,企業が採るべき細かい内容も明らかになってくると思われますので,引き続き注視していく必要があります。