書評(エクササイズ刑事訴訟法)
- 2016年05月16日
- 刑事弁護
著者の粟田知穂検事は,平成9年に検事として任官し,東京地検等で実務に携わるほか,最近まで,慶應義塾大学法科大学院教授,司法試験考査委員を務められていました。
実は,粟田検事は,私と修習時代,同期・同クラスで,共に検事に任官したことから,親しい友人です。
任官して数年後に,恩師の検察教官にお会いしたときに,「粟田君は今福岡地検小倉支部にいるが,スマートな事件処理をするということで,東京でも有名だよ。」と言われたことがあります。
確かに粟田検事は非常にスマートなだけでなく,オシャレなイメージで,関西で泥臭い事件処理をしていた私にとって,同期ながら憧れの存在でした。
その粟田検事がこのたび著書を刊行されましたが,装丁も,やはりスッキリとオシャレな感じです。
内容は,一通り刑事訴訟法を学んだロースクール生向けに,「複数の事例問題を検討することを通じて,問題発見能力や適切な法規範を導く能力,事実を抽出しあてはめる能力などを向上させることを目的」としたものです(同書「はしがき」)。
16問の事例が用意されており,問題編と解説編に分かれています。
どれも実務でもありそうな興味深い事例で,刑事実務における捜査,公判の重要な問題点を取り上げています。
解説は要領よくポイントがおさえられていますので,司法試験受験生はもちろん,若手の検察官も参考になる内容です。
また,私は,かねてから「敵を知り,己を知れば百戦危うからず。」(孫子)という観点から,適切な刑事弁護をするためには,検察官の物の考え方を知っておくことは非常に重要だと思っています。
そういう意味でも,刑事弁護に興味のある若手の弁護士にこそ,是非一読していただきたい内容です。
これだけ褒めれば,粟田検事も今度お会いしたときに,一杯おごってくれるかもしれません(笑)。
冗談はさておき,友人がこういった良書を刊行されたことは私も嬉しく,自分もがんばらなければいけないという思いを新たにしました。