法3条 | 「事業者は、私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。」 |
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法2条6項 | 「この法律において『不当な取引制限』とは、事業者が契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。」 |
法6条 | 「事業者は、不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事 項を内容とする国際的協定又は国際的契約をしてはならない。」 |
法8条1項 | 「事業者団体は、次の各号の一に該当する行為をしてはなら
ない。 一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること ニ 第6条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。」 |
法89条 | 「次の各号のいずれかに該当するものは、3年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処する。 一 第3条の規定に違反して私的独占又は不当な取引制限をしたもの」 |
法95条1項 | 「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。 一 第89条 5億円以下の罰金」 |
法96条1項 | 「第89条から第91条までの罪は、公正取引委員会の告発を待って、これを論ずる。」 |
法84条の3 | 「第89条から第91条までの罪に係る訴訟の第一審の裁 判権は、地方裁判所に属する。」 |
(ア)意思の連絡 |
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明示による合意のほか、黙示によるものも含まれます(東高平成7・9・25東芝ケミカル事件)。また、「特定の事業者が、他の事業者との間で対価引き上げ行為に関する情報交換をして、同一又はこれに準ずる行動に出たような場合には、右行動が他の事業者の行動と無関係に、取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り、これら事業者の間に、協調的行動をとることを期待し合う関係があり、右の『意思の連絡』があるものと推認されるのもやむを得ないというべきである」とされています(上記判決)。 |
(イ)意思の連絡の立証方法について |
カルテルは秘密裏に行うものですから、直接証拠がなく、間接事実の積み重ねによる立証がなされる場合が多いです。 例えば、 ①価格の引き上げなどの行動が一致しており、それが合理的に説明できないこと、 ②事前に会合を開いて話し合うこと等が行われていること、 ③合意の対象事項(価格、生産制限等)の意見交換が行われていることなどから、カルテルがあったと認定していきます。 |
(ア)特定の事業者が拘束を受けない場合(一方的拘束)や、拘束内容が異なる場合はどうでしょうか。これは、事業者の範囲は競争者に限られるかという問題です。 |
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判例は、「①競争関係にある事業者が、②相互にその事業活動を拘束し、③制限が各事業者に共通することが必要。」(東高昭和28・3・9)としております。ですから、垂直的協定(取引段階を異にする事業者間のカルテル)は、不当な取引制限ではなく、不公正な取引
法又は私的独占として処理するというのが原則です。 ただ、この「競争関係」というのは緩やかに解される傾向にあり、東高平成5・12・14(シール談合事件)では、「指名業者でないDが談合に参加した場合であっても、実質的競争者に該当すればよい。本件で指名されなかった業者は、指名業者の一社にかわって談合に参加し、他の業者もそれを認め共同して談合を繰り返していたもので、Dの同意なくしては本件入札の談合が成立しない関係にあったのであるから、Dもその限りでは他の3社と実質的には競争関係にあった。」 としています。 |
(イ)拘束の程度 |
事実上の拘束で足りるとされています。ですから、違反について何らかの制裁がないような紳士協定であっても、カルテルが成立します。 |
(ア)競争の実質的制限の意義 |
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競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる形態が現れているか、または少なくとも現れようとする程度に至っている状態をいいます(東高昭和2・9・19)。 |
(イ)ハードコア・カルテルの場合 |
競争の実質的制限については当然に推定されます。 |
(ウ)非ハードコア・カルテルについて |
各種ガイドライン(共同研究開発ガイドライン、事業者団体ガイドラインや事前相談事例を参考に、慎重な検討が必要です。 |
ア 公共的入札ガイドライン | ||||||||
類型ごとに×(原則として違反)、△(違反となるおそれ)、○(原則として違反にならない)を定めています。以下、簡単にまとめました。
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イ 入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律 | ||||||||
これは官僚が談合に積極的に関与するいわゆる「官製談合」が問題になってことからできた法律です。
国ないし地方公共団体の職員又は特定法人の役員ないし職員が入札談合などに関与していた場合には、公取委は各省庁の長に対して改善措置を講ずることを求めることができます。 また、公務員が、入札等により行う売買等の契約の締結に際し、職務に反し、談合を唆すこと、予定価格その他の秘密を教示することその他の方法による入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処せられます。; |
(1)審査手続き(法45条、47条1項) |
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ア 一般人からの報告(平成16年度2607件。うち1663件が不当廉売事件)、公取委自身の探知、課徴金減免制度を利用した事業者からの報告などが端緒になります。 イ 立入検査 拒否すると罰則が課されます(1年以下の懲役、300万円以下の罰金)。犯則手続と違って行政の調査なので、令状は不要です。また、このとき、被疑事実等の告知書が交付され、どういう件で調査されているのかの概略は分かる仕組みになっています。 ウ 提出命令・留置 拒否すると罰則があります。提出した書類等は原則として閲覧謄写ができます。 エ 出頭命令・審尋 出頭命令を発出して、審尋調書を作成します。やはり拒否すると罰則があります。審尋調書は審査中は閲覧・謄写できません。 オ 報告命令 事件関係人・参考人から報告を徴する手続です。 カ 鑑定 キ 任意調査 上記のような罰則付きの間接強制調査ではなく、実際には、事情聴取、供述調書作成、物件の提出などが任意でなされる場合も多いようです。 |
(2)事前手続 |
ア 事前通知 排除措置命令の内容、認定事実、法令の適用(課徴金の場合は額、計算の基礎、違反行為)と、事業者が文書により意見を述べ証拠を提出することができる旨とその期限を文書で通知します。 イ 事前説明 事前通知を受けた者又は代理人の申し出により、もう少し詳しい事前説明がなされます。 ウ 意見申述・証拠の提出 事前通知から2週間程度で行わなければならない運用となっており、タイトなスケジュールです。 |
(3)排除措置命令の例(カルテルの場合) |
これは違反があっても必ず命じられるというものではなく、必要に応じて命令が出されます。 例としては、 ①カルテル協定・合意の破棄、 ②カルテルを取りやめたことや今後は各事業者が自主的に事業活動を行うことの取引先・需要者・消費者への通知又は広告等の周知徹底措置、 ③今後同様な行為を行ってはならない旨の不作為命令、 ④組織の解散や改組等の構造措置、 ⑤社内法令遵守体制の整備、 ⑥社内通報制度の設置、 ⑦社員の人事配置、 ⑧とった排除措置の公取委への報告などがあります。 最近は、特に⑤のコンプライアンスの構築などが命じられることが特徴です。 また、過去の違反でも、3年を経過する前のものであれば排除確保のための措置を命令できるとされています(法7条2項)命令違反に対する制裁ですが、排除曾地命令が確定する前は過料による間接強制(法97条)であり、確定後は刑事罰(2年以下の懲役又は300万円以下の罰金)があります。 |
(4)課徴金納付命令 |
課徴金は、違反があると原則として必ず命じられるものです。 ア 課徴金の額 違反行為の対象となった商品役務の売上額×10%とされています。ただし、小売業は3%、卸売業は2%。中小企業については、4%(原則)、1.2%(小売業)、1%(卸売業)という軽減規定があいます。 イ 課徴金減免制度(リニエンシー制度)(法7条の2、課徴金減免規則)これは例えるなら「自首」のような制度で、公正取引委員会が把握していない違反の事実を進んで情報提供すれば、課徴金が減免されるというものです。 ① 調査開始日前に1番目に違反行為の報告・資料の提出をした事業者→課徴金免除。 ② 2番目→50%減額 ③ 3番目→30%減額。 3社に達していない場合には、調査開始後であっても、速やか(20日以内)に報告・資料の提出(公取委が把握している事実以外の事実)をした事業者は30%減額となります。 ただし、内容に虚偽があった場合等は課徴金の減免はありません。また、公正取引委員会に報告したということについては、第三者への秘匿義務が課されます(規則8条)。 |
(5)警告・注意 |
法的措置をとる証拠はないが違反の疑いあるときには、警告がなされます。 違反を疑う証拠はないが、違反につながるおそれのある行為があるときは、注意がなされます。警告・注意については、審判手続等によって争う途はありません。 |
(6)審判手続 |
ア 審判請求 命令書の謄本の送達があった日から60日以内に、公正取引委員会に対して行う必要があります。なお、排除措置命令、課徴金納付命令に対する執行は原則として停止しません(行政処分の公定力)。 イ 場所 公正取引委員会審判廷(中央合同庁舎第6号館B棟19F) 東京都千代田区霞が関1-1-1(東京地検と同じビル) ウ 執行停止について 特に取締役会決議や同業者等への通知については、排除措置命令の執行を停止しないと不利益が大きいです。そこで、以下のような執行停止制度があります。 ① 公取委による執行停止 職権発動を促す上申書を提出することになります。 ② 裁判所による執行停止(法70の6) 東京高裁の専属管轄裁判所の定める保証金又は有価証券を供託することにより執行を免れます(非訟事件手続法の手続によって行います)。 |
(7)審決取消訴訟 |
通常の行政訴訟とは違った特徴があります。 ア 出訴期間 審決書の謄本の送達を受けた日から30日以内に提起する必要があります。通常の行政訴訟は、6か月ですから、極めて短期間のうちの訴訟を提起しなければならないことに注意する必要があります。 イ 被告 公正取引委員会です。通常の行政訴訟では「国」とされていることとの違いです。 ウ 管轄 東京高裁の専属管轄です。 エ 事件記録の送付 審判記録はすべて裁判所に送付されます。 オ 実質的証拠法則 法80条「公正取引委員会の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには、裁判所を拘束する。」 実質的な証拠とは、審決認定事実の合理的基礎たり得る証拠。すなわち、その証拠に基づき、理性ある人が合理的に考えてその事実認定の到達し得るところものであればよい(東高昭31・11・9)とされています。 裁判所は、審判で取り調べられた証拠から当該事実を認定することが合理的であるかどうかのみを審査(最昭50・7・10)しますので、普通の訴訟で自由な心証で裁判所が判断することと比較すると、かなり拘束されています。 カ 新証拠の申出の制限 ①公取委が正当な理由なく、証拠採用しなかった場合、 ②審判において証拠を提出することができず、かつそのことに重過失がない場合、に限って、新たな証拠を提出できます。ですから、審判段階で重要な証拠はすべて申し出をしておく必要があります。 |
(8)犯則調査手続 |
ア 法89条から91条までの事件(犯則事件)を調査するため必要があるとき、裁判官の令状に基づいて、臨検、捜索・差し押さえが実施され、犯則の心証を得たときは、検事総長に告発がなされます。
なお、刑事事件についても、リニエンシー制度の趣旨を踏まえて、調査開始日前に最初に課徴金の免除に係る報告・資料の提出を行った事業者等については、告発を行わないとされています(告発・犯則調査運用方針)。 イ 犯則調査の対象 ① 国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質・重大な事案 ② 違反を反復して行っている事業者等や排除措置に従わない事業者等に係る違反行為のうち、行政処分によっては独禁法の目的が達成できないと考えられる事案に該当すると疑うに足りる相当の理由のある被疑事件(告発・犯則調査運用方針) |
(9)刑事手続き |
平成17年改正前は東京高裁の専属管轄でしたが、現在は、各地の地方裁判所に管轄があります(法84条の3)。そのため、東京の事件であっても、関西の地検が担当する場合もあり得ます。 |
(10)今後の改正に向けた動き |
以下は、独占禁止法の改正についての最近の報道です。
「談合主導企業に課徴金を5割増 独禁法改正案」
公正取引委員会は14日、カルテルや入札談合で主犯格の企業に対する課徴金を、今より5割増しにする独占禁止法改正案の骨子をまとめ、自民党独禁法調査会で提示した。改正法案は今通常国会に提出する方針だ。談合などの課徴金は、大企業の製造業の場合、現在は違法行為に関連した売り上げの10%だが、主犯企業への罰則強化により、15%に上がる。 一方、談合などを公取委に告発し、課徴金を減免する企業数は3社から5社に増やす。課徴金は、最初の申告企業が全額、2番目が半額、3番目以降は30%を減免される。減免を適用する企業を増やすことで、談合の告発を促す効果を狙っている。 (asahi.com08.2.14) 「公取のカルテル・談合審判、裁判所に移管へ・・・2年内に改正」
公正取引委員会は24日、独占禁止法の改正で存続が焦点になっていた審判制度を、全面的に見直す方針を決めた。 カルテルと入札談合事件の不服審査は公取委から裁判所に移管し、それ以外の違反行為は処分前に事業者の主張を聞いた上で審判を行う。2010年までに細部を詰めた上で、独禁法を改正する方針だ。 現行の審判制度は、公取委の排除措置命令などの行政処分に不服がある場合、事業者側は公取委に申し立て、公取委自らが処分の妥当性を判定している。3人の審判官による合議で審決案を出し、最終的に公取委員長を含む5人の公取委員が審決を下す仕組みだ。 これに対し、公取委がまとめた審判制度の改正案は、独禁法違反のうち、違法性が強いカルテルと入札談合などで排除措置命令や課徴金の納付命令に不服があれば、「直接裁判所に取り消しを求めることができると明記している。 一方、合併や株式の取得、役員派遣などで他社を制約して市場を支配する「支配型私的独占」などの違反行為は、「公取委で処分前に審判を行う」とした。 ただ、公取委は今通常国会に提出を予定している独禁法改正案には間に合わないと判断し、「2年以内に詳細な制度設計を行う」として、審判制度の見直し部分の改正案は10年の通常国会に提案する方針だ。 (2008年1月25日09時16分 読売新聞) |