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Archive for 11月 1st, 2021

プレサンスコーポレーション元社長に対する無罪判決のご報告

月曜日, 11月 1st, 2021

裁判(朝日新聞デジタル)本年10月28日,大阪地方裁判所は,業務上横領罪で起訴されていたプレサンスコーポレーション元社長の山岸忍さんに対して,無罪の判決を言い渡しました(※写真は,朝日新聞デジタルの記事より引用)

中村は同事件の主任弁護人であり,渡邉弁護士も弁護団の一員として活動しました。

この事件は,学校法人明浄学院の運営する高校敷地の売却代金21億円を,同学校法人の理事長であったO氏らが横領したというものです。

検察官は,山岸さんの部下であったK氏の供述に基づき,K氏が山岸さんに対して「O氏個人に学校法人の買収資金を貸し付けて欲しい。そうすればO氏らが理事となって,プレサンス社に学校の敷地を売却できる。貸したお金は,学校の土地売却代金から返済される。」と説明したと主張し,これにより,横領の共謀があるとして山岸さんを起訴しました。

しかし,本件に関する客観的証拠を検討すると,山岸さんがお金を貸し付けた当時は,O氏個人ではなく,学校法人がお金を借り入れるという内容の文書やメールが多数存在していました。

つまり,その時点で関係者は,O氏個人ではなく学校法人が債務を負担するという計画の下で動いており,K氏の供述は,これら客観的証拠に完全に矛盾するものでした。

さらに,K氏に対する検察官の取調べの録音録画の内容からは,検察官がK氏に対して,「山岸さんにO氏個人に貸し付けることを言っていないなら,あなたは,プレサンス社の評判をおとしめた大罪人だ。会社から10億,20億ではすまされないほどの多額の損害賠償請求をされるが,それを背負う覚悟はあるのか。」などと言い,山岸さんの関与を認める供述を強要していたことが明らかになりました。

また,K氏以外にも,不動産会社のY氏の供述調書でも,O氏個人への貸付けであることを山岸さんに説明したとの内容が記載されていました。

しかし,Y氏は,公判での証言でその事実を撤回し,検察官から,「山岸さんの関与を認めないと,自分の責任が重くなる,部下も逮捕されるということをほのめかされて,事実とは違う内容の供述調書に署名してしまった。」と証言しました。

そして,このことはY氏に対する取調べの録音録画でも裏付けられました。

裁判所は,このような客観的証拠と,重要証人に対する検察官の問題のある取調べ経過を理由として,山岸さんが共謀に関わった事実は存在しないとして,無罪判決を言い渡したのです。

裁判所は,特にK氏の供述については,勘違いなどするはずのない客観的証拠に明らかに矛盾するもので,故意に嘘をついた可能性が高いとまで判断しており,本件では,山岸さんが完全に潔白であることが明らかにされたものと評価できます。

本件の関係証拠は極めて多数にのぼり,取調べの録音録画も長時間にわたるため,弁護団がその内容を吟味して,裁判所に提出するのには大変な苦労がともないました。

しかし,その結果明らかになったことは,大阪地検特捜部が,客観的証拠を無視して,関係者の供述を捻じ曲げ,冤罪を作り出してしまったということです。

弁護人としては当然の無罪判決と考えており,山岸さんやそのご家族をこれ以上苦しめないためにも,検察庁は過ちを素直に認めて,控訴を断念すべきです。