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Archive for 2月, 2017

無罪事件(暴行罪)のご紹介

金曜日, 2月 24th, 2017

 はじめに

甲市議会議員であったXさん(仮名)は,平成23年2月28日に暴行罪により略式命令を受けましたが,平成24年9月26日に無罪判決がなされ,その判決は確定しました。

私(中村和洋)は主任弁護人を務めていましたが,この事件は,警察,検察が捜査を完全に誤ったもので,Xさんはえん罪の被害者であるといえます。

以前の事件ではありますが,二度とこのようなことが起こらないように,Xさんのご了解の下,本ブログで紹介をいたします。

2 起訴された事実

Xさんが,起訴された事実は,以下のようなものでした。

「被告人は,身近で世話をしてその更生のための面倒を見ていたA氏に対して,その態度が悪いなどとして立腹し,

(1)平成22年9月21日午後7時30分ころ,大阪府内の会社事務所内において,同人に対し,その顔面を2回足蹴にする暴行を加え(以下「第1事件」といいます。)

(2)同月22日午前10時頃から同日午後零時ころまでの間,大阪府内の道路を走行又は停止中の自動車内において,同人に対し,平手及び側掌部でその顔面を数回殴打する暴行を加え(以下「第2事件」といいます。)

たものである。」

3 捜査について

本件は,まず,A氏が警察に傷害事件として被害届を提出したことにより,捜査を開始されました。第1事件については,A氏が被害にあったという自らの供述のほか,A氏の両親が目撃したと供述していました。第2事件については,A氏の供述のみが証拠でした。

警察は,このようなA氏やその両親の供述のみを鵜呑みにして,捜査を開始したのです。

しかも,A氏は,第1事件や第2事件で怪我をしたとして,鼻骨骨折の診断書を提出したものですが,実は,それは何年も前のA氏の自傷行為によるものでした。

警察は,怪我の裏付けについて確認すらしないまま,平成23年2月7日に,Xさんを突然逮捕し,その後,20日間にわたって勾留したのです。

その当時,Xさんは,甲市議会への立候補を予定しており,その準備中でした。

取り調べに対して,Xさんは,事実を否定していましたが,警察官から,このままでは外に出られないなどと脅迫されました。

Xさんは,このまだと自分は立候補ができなくなり,周囲の人に大きな迷惑をかけてしまうと思いました。

その結果,嘘の自白調書に署名させられてしまったのです。

事件の送致を受けた検察官は,Xさんが自白をしているとして,A氏の供述の不自然な点などを見過ごしました

そして,検察官は,証拠をきちんと吟味しないまま,安易に略式起訴をしたのです。

4 公判について

その後,Xさんは,略式裁判に対して異議申立をして,裁判で無罪を争いました。

Xさんを取り調べた警察官や,検察官尋問の結果,彼らが証拠の検討を怠ったまま,杜撰な捜査や取り調べを行なっていたことが明らかになりました

また,A氏やその両親を証人尋問した結果でも,彼らの証言内容は,不自然でころころと変遷するようなものでした。

しかも,A氏は以前から薬物の使用による影響から妄想や虚言が多いことも,明らかになりました。

Xさんは,保護司を務めていたこともあり,これまで,そのようなA氏を身近に置いて世話をしていました。

しかし,事件があったとされる当時,A氏の一向に改まらない生活態度をみかねて,実家に帰るように言ったのです。

そのため,A氏には,Xさんを逆恨みして,嘘の被害申告をする動機もありました。

その結果,判決では,A氏やその両親の証言は全く信用できないものとして,Xさんは無罪となったのです。

検察官は,当然,控訴できませんでした

当時,Xさんは,治療薬の副作用による難病に苦しんでおられ,重度の咀嚼機能障害により,肉体的にも大きな苦痛を受けていました。

そのような中で,このような裁判の負担は非常に大きなものでした

5 今後の課題

昨今,取り調べの可視化ということが,大きな話題になっており,平成28年度の刑事訴訟法の改正では,一部例外を除いて,取調べについて録音・録画するという制度が採用されました。

これまでの密室による捜査官の取り調べが多くのえん罪事件を生んできました。

今回の事件のように,基本的な捜査や証拠の検討を警察,検察が怠ることで,誤った起訴がされてしまうこともあります。

今後,このようなことが二度と起こらないように,更なる捜査の近代化が強く望まれます。