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検察官の上告について~はずれ馬券裁判

金曜日, 5月 23rd, 2014

s_0_vc8_img-01_vc8_img-01_0_vc8_img-01本日,大阪高裁の判決に対して,検察官が,最高裁判所上告しました(引用画像は最高裁判所の建物〔裁判所HP〕)。

大阪地裁,大阪高裁の判決は,いずれも,本件の被告人の一連の馬券購入は,「営利を目的とする継続的行為」に該当し,雑所得になることから,はずれ馬券を含めた馬券の購入費全額が必要経費に該当するとして,被告人側の主張を認めたものです。

弁護人としては,所得税法の解釈としても,常識に従った判断であるという点からも,正当なものと評価しています。

判決の内容が非常に説得力があることからしても,上告審で覆る可能性は極めて低いのではないかと考えています。

それにもかかわらず,検察官が上告した理由を推測すると,以下のことが考えられます。

今回の上告については,当然,検察庁と国税庁とで協議したものと推測されます。

本件の控訴審判決を真摯に受け止めるのであれば,国税庁は,馬券の払戻金の課税について明確な制度設計をする必要があります。

そして,被告人以外の場合の,一般に継続してPAT取引を行っている競馬愛好家について,どの程度に至れば「雑所得」となるのか,具体的な線引きをする必要があります

しかしながら,国税当局は,これを自ら考えることなく,最高裁に丸投げをしました

また,実際に考え得る制度としては,PAT取引以外の購入者との公平性や,競馬の売上の約1割が国庫に納付されていることを考えると,

① 馬券の払戻金を非課税にする,

② 馬券購入時か払戻時に一定の割合の税を徴収する(ただし,国庫に納付されている分以外に重ねて納税を求めることからすれば,数%程度の低率なものとすべき。)

ことが,バランスの取れた妥当なものだと思います。

本来は,国税庁が自ら,国民の納得の得られるような合理的で公平な制度設計をすべきですが,今回の上告は,その責任を放棄し,結論を先送りしたものであって,誠に残念というほかありません。